楽しければ全ておk | ナノ
お昼休み。今日はどこのグループに入れてもらってご飯を食べようか(私は基本的に自由に生きてるのでグループ行動は苦手なのです)と悩んでいたら、名前を呼ばれた。
「?あ、切原。どした?」
「一緒に飯食おうぜ」
「テニス部は?」
「今日は何もねぇんだと。さっきメール来てた」
飲み物でも買いに行っていたのか、手にはコーラ(カロリーゼロ)を持ち、教室に入ってくるなりガタガタと机とイスを私の机にくっつけ始める。鞄から取り出したお弁当箱は私のより大きくて、運動部なんだなぁ、なんて思う。が、切原もワラ厨なのだ。ちょっと複雑な気分かっこわらい。
「あ、そういや今日の告知ってなんだよ?」
「んー、わかんない」
「はあ?」
「いやね、善哉Pが告知したいーって」
「・・・なんで善哉Pがお前のとこで告知するんだよ」
「私もそこが謎なんだよねー」
お弁当に箸を進めながら話すが、きっと私たちの会話なんて教室の喧騒で消えているだろう。そうじゃなきゃ分かる人には分かる話だし、それはちょっと困る・・・気がする。
「ま、善哉Pだし新曲の告知とかじゃない?」
「・・・」
まだ何か納得がいかないのか切原らしくもなく、眉間にしわが寄っていた。そんな切原を見ながら私は弁当を食べ終える。あ、唐揚げ美味しそう。
「ね、唐揚げちょうだい」
「んー」
「え、良いの?」
「んー」
「・・・」
なにやらまだ考えているようで、私の言葉は届いていないようだ。そうと決まれば早速唐揚げをいただこうではないか。話を聞いてない切原が悪い。ひょいっと切原のお弁当からなるべく小さめの唐揚げを選び口へ運ぶ。ジュワっと溢れ出た肉汁と生姜と醤油の風味が絶妙だ。もしゃもしゃと咀嚼し飲み込んで数秒。
「あー!俺の唐揚げ!なに食ってんだよ!」
「意識飛ばしてた切原が悪い」
「どや顔で言うな!ったく・・・」
「赤也」
「うをっ!?え、あ、柳先輩!」
「食事中悪いな。幸村からの伝言だ」
ぬっと切原の背後に現れたのはどうやらテニス部の関係者らしい。そういえば私の学校ではテニス部が有名らしいが、ぶっちゃけリアルなんて二次元に比べればどうでも良いのでよく知らない。というか、この人前はちゃんと見えてるんだろうか。思わずジッと見ていたせいか、ふと柳先輩とやらの顔が私の方へ向いた。
「・・・」
「・・・」
特に何も話すわけでもなく、ただ目が合う。切原は残っていたお弁当のおかずを口にかき込んでいる最中なので、気づいていない。どうしたらいいんだろうか。とりあえず、目を離したら負けだと思う。
「雑賀?なに見てんだよ。あ、柳先輩まだ居たんっスか」
切原は柳先輩とやらがすでに帰ったのだと思っていたらしい。何も発しない私たちに疑問を抱いたのか、首を傾げて数秒後、思いついたようにパッと顔色を良くした。
「柳先輩、こっちは俺の友達で、雑賀奈緒っス。こっちはテニス部の柳先輩な」
「柳蓮二だ。ウチの赤也が世話になっているな」
「いえ、私の方こそご迷惑をおかけして・・・」
微妙な空気が流れて、その後特に何も話すことはなく柳先輩は教室から出て行った。
「私、あの先輩苦手かも」
「なんで?」
「なに考えてるのかわかんない」
「ふーん。ま、良いんじゃね?俺は良い先輩だと思うけどなー」
お弁当を片付けながら言う切原の顔を見れば、口元にご飯粒がついていた。
「切原、ご飯粒ついてる」
「あ、悪ぃ」
言うのが早かったか、手が動くのが速かったか。切原の口元についていたご飯粒を取ってあげた。全く、子供か。