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とりあえずはよ着替えてください、と言い残して光は部屋を出た。私の格好はといえばネクタイを緩めてボタンも開けて、もの凄くだらしない。最早さっきの出来事のせいで羞恥心などはどこかへ飛んでいった。無駄にでかいタンスから適当な服を取り出して着替え、部屋のドアを開ければ誰も居なかった。

「・・・下に行ったのか」

階段を下りる音が聞こえなかったのは私がいろいろと末期っていたからだろう。私も1階へ下りてみれば、案の定ソファに座っている光を発見した。叔母さんの隣に座っているが、こちらからは後頭部しか見えない。お母さんの方を見れば、ばっちりと目が合ってニタニタと笑われたような気がするが、スルーだ。

「あ、自分の分は持ってきなさいよ」

「・・・うーい」

キッチンまで行って冷蔵庫の中に入っている私が買ってきたあずま和菓子の袋から大福を取り出す。飲み物は適当に冷蔵庫の中に入っていたパックのフルーツジュース。それを両手に持ちながら私もお母さんの横のソファに座る。

「ふふ、ごめんなさいね。部屋に光が居て驚いたでしょう?」

「あー、はい。まあ、少しだけ」

「あら、気にしなくても良いのよ。私が言ったんだし」

「・・・お母さんの差し金だったのか」

「漫画みたいな展開だったでしょ?」

「いや、そんなありがた迷惑要らないから」

全くお母さんは何を考えているんだ。そんな事も気にせずに財前親子はお茶を飲んでいる。

「あっ、二人は自己紹介したの?」

「まあ適当にしたわ」

叔母さんが楽しそうに話を切り出したと思ったら、即答で光が答える。それにつまらなそうにしている叔母さん。なんて可愛い人なんだ。思考が駄々漏れしてたのか、光がドン引いたような目で私を見ていた。そんな目で私を見るな・・・!

「・・・奈緒は、大福が好きだからあの名前なん?」

「ん?ああ、そうだよ。それ以外に理由はない」

「・・・どや顔うざいっスわ」

私だって傷付くんだぞ。しかもよくよく見れば光イケメンじゃまいか。なんてこったい。お母さんと叔母さんはすでに二人で盛り上がっているらしく私たちに話しは聞こえていないらしい。

「あ、光はなんで善哉さんなの?」

「そりゃぜんざいが好きやからに決まっとるやろ」

「ですよねー」

ずぞぞと残り少ないジュースを吸い込む。いやあ、まさか初めて出来たワラ動仲間がイトコなんて。しかもあの有名な善哉Pだったなんて。これなんてフラグですか。飲み終わったパックを潰し終わった途端、光が立ち上がった。

「トイレ?」

「アホか。ゲームするで」

「あ、うん」

有無を言わさない態度の光は早々に階段を上がっていった。私も立ち上がりジュースのパックと大福の包まれていた袋をゴミ箱へ捨ててから、自分の部屋へと向かった。
  

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