目には目を、歯には歯を | ナノ
「ふーん、じゃあ午後は帰るのか」
「そうですね。荻野先輩と一緒に帰れないのは寂しいですけど」
「ま、臨也さんによろしくな」
「はい!」
お昼になり中庭へ来てくれた荻野先輩と一緒にご飯を食べながら、先ほどのことを話した。ついでに午後の授業は受けずに兄ちゃんに会いに行く事も。あ、でもその前に一旦家に帰らなきゃなあ・・・制服濡れてるし。
昼休みもラスト5分というところで先輩と別れ、教室に鞄を置き去りにしたまま校門を出る。鞄は先輩が持って帰ってくれると言っていたから、お言葉に甘える事にした。どうせ鞄なんて学校に置いてても問題ないくらいに中身が入ってないんだけども。
「あ、兄ちゃん家に居るかなー・・・」
池袋から新宿に家を移したものの、兄ちゃんはことある事に池袋のほうに行くからなあ・・・。ま、なんとかなるでしょ。
シャワーを浴びてから適当に服を着て、1日分の着替えを持って家を出た。少し久しぶりに来た兄ちゃんの家のインターホンを押すと、「はい」と一言だけ、事務的な声が聞こえる。
「あ、波江さん?私だよ、日和」
「日和・・・?ちょっと待ちなさい」
それから数十秒と掛からぬ内にドアが開き、波江さんが顔を出した。
「やっ、久しぶりだね波江さん。元気してた?」
「日和も相変わらずね。とりあえず入れば?」
「おっじゃましまーす」
靴を脱ぎ捨てて入れば、波江さんが靴を揃えてくれている。ドアを開けてリビングに入れば、居ればパソコンの前に座っているはずの兄ちゃんが居なかった。
「臨也なら池袋に行ったわよ」
「あ、やっぱり?パソコンの前に居なかったからそうだと思ったんだよねー」
「・・・行くの?」
「うーん・・・どうしようかなぁ・・・でも静ちゃんに会えるかな?」
「さあ?でも臨也が池袋に居る時は大抵揃うわよね」
「行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
波江さんがちょっと呆れたような顔をしていたが、この際気にしないことにする。だっていつもの事だし。
静ちゃんに会えますように!
なんて願掛け(神なんて信じないけどね)をしながらもう慣れてしまった足取りで池袋に向かった。
池袋にて兄ちゃんと静ちゃんを探しながらいろいろな店を巡って、気が付けば太陽がオレンジ色に染まり沈もうとしていた。これ以上池袋を散策しても多分会えないかな。会えないときってホント会えないから。
「帰るかなぁ、・・・っと」
携帯を弄りながら突っ立って、帰ろうとした矢先、肩に何かが当たった。何かの方を見れば、どうやら人だったらしく、当たってきた人は私の顔を見た瞬間もの凄く不快そうに一瞬だけ顔を歪めた。が、次の瞬間には寒気がするような笑みを向けてきた。なんだコイツ。
「お嬢ちゃん、俺になんか用なん?」
「・・・はあ?」
「せやから、俺に用?」
コイツの思考回路は大丈夫なんだろうか。