目には目を、歯には歯を | ナノ
担任に呼ばれて職員室へ行けば、なぜか3年の幸村って奴にプリントを届けてくれと頼まれた。ふざけんな。しかも幸村って誰だよ。
「幸村は3年C組でテニス部の部長で、青い髪をしている美少年だ」
「はあ、」
「よろしく頼んだぞ」
ポンッと背中を叩いて担任はどこかへ去っていく。おい待てこら、なんて言ったら停学もしくは退学になる可能性があるので止めておく。しかしなんでこうもテニス部と関わらなくちゃいけないんだ。鬱病にでもなったら慰謝料高く取ろう。まあ鬱病になる気は更々ないんだけども。
のんびりとした足取りで3年C組へ向かう。あ、ていうかC組って荻野先輩と一緒じゃん。ラッキー!もしかしたら荻野先輩と会えるかも!
なんて思ってた数分前の私を殺したい。
「俺になんの用かな、折原さん」
明らかに敵意むき出しの笑顔でそう言ってくるのは幸村。周りの女子なんかはキャアとか悲鳴上げてるし。うるさい。どうやら荻野先輩はファンクラブ関係での用事があっていないらしい。超ショック。ここに居る意味なくね?
「ねえ、聞いてるのかい?」
「・・・あぁ、これ」
「・・・プリント?」
若干イライラしてきている幸村に片手でプリントを前に出せば怪訝な顔をしながら紙を手に取る。よし、私の用事は終わったから帰ろう。担任め、明日覚えてろよ。
「折原さん、」
「・・・なんですか」
「君は、本当に香織を苛めてるのかい?」
「はあ?」
思いっきり嫌そうに声を出せば、幸村は驚いたように目を見開く。大体なんで私が知らない女を相手にしないといけないんだ。意味わからない。数秒待ってみたものの、幸村は何も言ってこなさそうだったから自分の教室へ戻った。
自分の席に戻ってくれば、机の上には封筒に入れられた手紙が置いてあった。特に何も考えずに封筒を開けて手紙を開けば、放課後屋上、とだけ書かれていた。内容を確認してから、ぐしゃりと手紙を握りつぶしてゴミ箱に捨てる。
「手紙捨てるとかまじありえない」
「最低だね」
「親の顔が見てみたいわ」
クスクスと笑うのはクラスの女子。別に手紙捨てようが私の勝手じゃね?それと、親の顔が見てみたいって・・・私の親に会って正常で居られるってなら別に会わせてあげるけどなー。生憎写真は一枚もないんだよね。嫌いだから。
「折原さん、死ねば?」
「あはっ、それ言っちゃ可哀想でしょー!」
「でも事実だよねぇ」
今度は私の近くに来てゲラゲラと笑い出す。こいつらホントに何がしたいんだ。クラスの中を見てみれば、同じようにニタニタと笑っている人もいれば、我関せず、といった人も居る。
「あー、てか邪魔なんだけど」
「はあ!?」
「調子乗ってんじゃねーよ!」
私はゴミ箱にゴミを捨てたらすぐに席に着いて寝る予定だったのに、うざい絡まれ方されるし。パンッと教室に響いて、私の左頬が熱を持つ。目の前には、いかにも私が叩きましたざまあみろ、なんて顔をしてる女子が居たから、私も平手打ちをした。
「きゃああ!」
「ちょっ、何すんのよ!」
「何って、やられたからやり返しただけじゃん」
当たり前でしょ?なんて言ったら、絡んできた女子達は教室の外へ出て行った。