目には目を、歯には歯を | ナノ

 
自分の靴箱を開けたら、中にはシューズと一緒にお菓子などのゴミも詰め込まれていた。これは俗にいう“虐め”なのだろうか。くだらないなぁ、なんて考えていたら周囲からはクスクスと笑い声が木霊する。

「ねぇ、泣いちゃったんじゃないのぉ?」

「えー、まじウケるんですけど」

クスクスクスクス、笑い声は止まるどころか広まっていくばかりで、朝っぱらからめんどくさいなんて思うわけで。適当にシューズだけを取り出して落ちたゴミとかはそのまま放置。と思ったけどどうせなら靴箱に詰め込まれていたゴミを全て落とした。別に私が悪いわけじゃないでしょ?

「こんなところにゴミを入れる人の感性を疑っちゃうね」

にっこりと笑って言えば、周りで笑っていた女の子達はピタリと笑うのを止めて私を睨んでくる。

「・・・折原さん、調子乗りすぎなんじゃないの?」

「そうよ。後輩の癖に生意気すぎ」

「その後輩に腹を立ててる貴方達は酷く心が狭いんですね」

「ッ、この・・・!」

「はいストーップ」

一人の女子が明らかに私を叩こうとしていた手を止めたのは、紛れもなく荻野先輩だった。やっぱり荻野先輩かっこいい。

「女の子がこんな事しちゃダメでしょ?」

「っでも・・・!」

次第に涙目になる女子。駄目だなぁ、イライラしちゃう。そんな目で荻野先輩を見ないでよ、不細工。ぐるぐると回転する思考は不意に頭に置かれた手によって停止する。

「さ、日和ちゃん行こうか」

「・・・はい、荻野先輩」

隣に並んで私の教室まで送ってくれる。廊下を歩けばほぼ全員が私を見てコソコソと話す。恐らく昨日の事だろうとは思うが、はっきり言っていい迷惑だ。教室までの短い時間を荻野先輩と共に出来たことは嬉しかったが、クラスの人間はどうやら笹部香織とかいうふざけた奴の味方らしい。

「あーあ、ホントあの女死ねば良いのに」

ポロリとこぼした本音に、気が付けば私は殴られていた。少し口の中が切れたのか血の味がする。ふと視線を上げれば、怒りを目に宿したワカメが居た。

「テメェ、ふざけんなよ!香織先輩がアンタに何したっていうんだよ!」

「・・・何もしてないね。むしろ私がされてる感じだけど」

嘲笑の意味も込めて鼻で笑ってみれば、ワカメの蹴りが腹に入る。あー、まあ、ね。普通の人間ならさ、痛いとか思うじゃん?私さ、ちょっと普通じゃないから。池袋で喧嘩人形とか呼ばれてる静ちゃんとガチ喧嘩したことあるし。まあ静ちゃんは優しいから手加減してくれてたけどね、多分。

「何その蹴り。本気でやってるの?」

「なっ・・・!」

「そんなんじゃ私に“痛い”だなんて感情一生抱かせられないよ?」

にっこりと笑って言って上げれば、ワカメは舌打ちをしてから教室を出て行った。朝からテンション下がるわー。
  

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