目には目を、歯には歯を | ナノ

 
駅前にある最高級マンション。なんと1ヶ月50万だとか。やっぱり荻野先輩ってすごいなぁ、なんて実感。まあこのマンションに来るのは何度目かわからないけど。入口から入り、更に奥へと続く扉の前にある数字の書かれているパネル。すでに慣れてしまった番号を入れる。

「・・・はい、どちら様でしょうか」

「荻野先輩!私です、日和です!」

「おー、すぐ開けるわ」

ガチャン、と重い鍵が開く音がしてゆっくりとドアが開く。中にあるエレベータに乗り込み18階のボタンを押す。ポーンという軽快な音とともにドアが開き、目の前には一つの扉。

「荻野せんぱーい!」

「開いてるー」

ドアノブを手に取り押せば簡単に開くドア。靴を揃えてから、リビングへと続くドアを開ければ、ソファに座り何かの資料を見ている荻野先輩を見つける。

「よぉ、おかえり」

「ただいまです」

「いつものとこにマグカップあるから」

「はーい」

資料から目を離すことなく会話をするのに少しだけ不満を感じながらもキッチンへと私専用のマグカップを取りに行く。ついでに先輩が飲んでいたであろうマグカップを見ればすでに空に近かったので一緒に持っていく。戸棚にしまってあるマグカップと、どこで買ってきたのかわからないような高級そうな豆を取る。コーヒーメーカーにセットして待つこと数分。

「荻野先輩はブラックですよね?」

「・・・あぁ、頼む」

「はぁーい」

なんとなく新婚さんみたい、なんて考えるのも何回目だろうか。まあ私と先輩が結婚するなんてありえない話なんだけどね。淹れたてのコーヒーを持ちリビングへ向かえば、先輩は資料を読み終わったのかソファの背にもたれかかっている。

「荻野先輩、どーぞ」

「サンキュ。あ、鞄はそこな」

「ありがとうございました」

「別にお礼言われるほどの事じゃねぇけど」

「私が言いたいだけです」

「そ。・・・で?何かわかったわけ?」

「・・・そうですね、わかったと言えばわかりました」

「へぇ、何かわけあり?」

「兄ちゃんが調べたのに、何も無かったんですよ」

そう伝えると一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに考えているような顔になった。ああ、そんな荻野先輩も素敵です。

「・・・日和は、アイツの事どうするんだ?」

「笹部香織ですか?もちろん、売られた喧嘩は買うまでです」

「ククッ、俺アイツに同情するわ」

「えー、先輩が同情するなら私やらない」

「なんで?」

「だって先輩が私以外のこと考えてるの嫌だもん」

「相変わらずだな、日和。でもまあ、同情する価値もねぇか」

ゴクリとコーヒーを一口飲んでから、先輩は私の頭をゆっくりと撫でる。うん、このために生きてるって感じ。でも、

「あの女、荻野先輩も狙ってくるような気がするんですよね」

「・・・うげぇ、それは勘弁」

「まあ女の勘ですけど」

「日和の勘はマジで当たるから厄介だな」

「大丈夫ですよ、先輩」



私がどうにかしますから。



  

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