秘密の森にて君と | ナノ


「私ね、別に不幸だと思ったことはないの。世界が見れなくたって、私には家族が居て、景吾が居て、ジローくんだって居てくれる。世界はこんな風なのかなって想像するのも楽しいの。でもね、最近は少しだけ視力があったらなって思うの」

「・・・どうして?」

「だって、そしたらジローくんが見える。ジローくんと同じ世界を感じることが出来るもの。ふふ、おかしいかな」

「おかしくないC」

いつもの様に、いつもの場所で。出会った日から学校がある日は数分でもここに来るようにしている。だって、俺が話したいから。俺が四ノ宮ちゃんと一緒に居たいから。

「ねぇ、椿ちゃんって呼んでE?」

「うん、良いよ」

「・・・椿ちゃん」

「はい、なんですか?」

「呼んでみただけだC」

二人してクスクスと笑って、椿が淹れてくれた紅茶を飲む。だけど俺にはやっぱり紅茶の種類なんてわからないから、今度教わろうと思う。

「ねぇジローくん」

「なーに?」

「私ね、すっごく今が楽しいの」

「俺もだC!」

「ふふふ、おそろいね」

「・・・今度、椿ちゃんと遊びたいC」

「え?」

「ダメ?」

「ううん、楽しみにしてるね」

俺たちの関係はといえば、特に変わることなく友達だ。本当はもう少し仲良くなりたいけど、これからなれば良いだけのことだし。今は、この関係で満足。

「あ、景吾」

「跡部ー、遅いC」

「ジロー、またサボってたのか」

そうそう、跡部も加わって三人で話すことも増えたんだ。




秘密の森にて君と

(でもいつかは、恋人になりたいC)


2012/02/17 END.

  

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