秘密の森にて君と | ナノ


もしかしたら昨日見たあの子は夢なのかもしれないと、心の隅で思ってしまう。だから、今日も俺は昨日の場所に行ってみようと思う。まずあの手入れをされていない小さな森があるのかが気になったが、呆気なく心配は杞憂だったと知る。

「やっぱり、現実だったC」

森を見つければすぐに中に入り込む。昨日通った場所がわかるから、それを頼りに突き進む。若干の道が出来ているため昨日ほど大変ではなかった。

「ふふ、いらっしゃい」

「四ノ宮ちゃん!」

開けた場所に出れば、昨日と同じようにイスに座って紅茶を飲んでいる四ノ宮ちゃんが居る。昨日は生憎時間がなくてあまり話せなかったが、今日はたっぷりある。次の時間は自習だって言ってたし。昨日と同じように四ノ宮ちゃんの前のイスを引いて座る。

「また来てくれたんですのね」

「昨日約束したC」

「ありがとう、ジローくん」

ふんわりと花が綻ぶ様に笑う四ノ宮ちゃん。それにつられて俺も笑う。今日は昨日と違う紅茶みたいだけど、俺にはこれがなんていう種類かわからない。

「四ノ宮ちゃんはいつも何してるの?」

「私ですか?そうですね・・・音楽を聴いたり、ぼーっとしてることが多いですね」

「四ノ宮ちゃんってもっとお堅い感じだと思ってたC」

「あら、そうなんですか?ふふ、それなら私の失敗談でも聞きます?」

「え、Eーの?聞きたい!」

「そうですねぇ・・・小学校の頃に幼馴染が喧嘩をしてしまったんですよ」

「うんうん、それで?」

「それを止めようと思った途端に幼馴染が結構酷い事を言ってしまいましてね。ビンタの一つでもしてあげようと思ったら間違って喧嘩相手の方にしてしまって」

「えぇ!?大丈夫だったの?」

「幼馴染も喧嘩相手の方も私のせいで微妙な空気になったんですけどね。私が必死に謝ってると笑い出しましたよ」

「それなら良かったねー。俺も昔は喧嘩とかしょっちゅうやってたんだC」

「あら、そうなんですか?」

「うん!あ、宍戸っていう幼馴染が居てね・・・――」

俺の話しに四ノ宮ちゃんは笑ってくれて、それが嬉しくて嬉しくて、たくさんおしゃべりをした。60分はあっという間に過ぎて、少し遠くで授業終了の鐘の音が鳴った。

  

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