ブレス | ナノ
魔法の言葉
言葉で表すなら、べしゃりといった感じの言葉が合うと思う。
「――ッ、!!」
ちひろと一緒に散歩がてら歩いていた。歩幅が違うから俺が普通に歩いたら普通に考えて追いつけないのは分かっていたが、ぼんやりとしていたせいかそんな事気にせず歩いていた。ふと隣を歩いているであろうちひろを見たら隣に居ないではないか。急いで後ろを振り返ったら、小走りで走っていたちひろが何も無いところで転んだ。それはもう、綺麗に。
「ちひろ!大丈夫か?!」
「ッ、ま゙ー、ぐん゙!」
目に一杯の涙を溜めながら地べたに座り込んでいるちひろをとりあえず立たせて、怪我はないかと見れば膝小僧が少しだけ擦り剥けていた。
「痛いんか?」
「い、いだぐない!」
無駄なところでプライドがあるというか、何というか。今にも泣き出しそうな顔を見たら痛いことなんかすぐに分かるというのに。
「痛いの痛いの飛んでけー」
昔よくやっていた傷口の上に手をかざして、パッと手を遠くの方へ向ければ、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたちひろ。そんな表情も可愛いと思ったのは内緒だ。
「痛くなか?」
「ん、へいき!」
さっきまでの泣きそうだったのはどこへいったのか、満面の笑みを浮かべたちひろの頭を撫でて、今度は離れないように手を繋いで家に帰った。
(あら、ちひろちゃん転んじゃったの?)
(へいき!まーくんがいたいのどっかやった!)
(そうなの。良かったわね)
(ん!まほーみたいだった!)