ブレス | ナノ

 
バレた!

朝起きてみれば、外は大雨。まさしくバケツをひっくり返したような雨がザーザーと音を立てて窓を激しく叩いている。

「これじゃ部活は中止かのう・・・」

ぼんやりとベッドの上から窓の外を見ていたらギシッと、ベッドのスプリングの軋む音とが耳に入る。雅治のベッドに上ってくるのは、この仁王家ではただ一人。

「・・・まーくんおきてた」

「おはようさん、ちひろ」

「ん、おはよう。あさごはん、できてる」

「すぐ行くなり」

雅治の言葉を理解したのか、ベッドから降りてドアの方へかけていくちひろ。あと数歩で部屋から出るって時に、雅治の携帯が震えた。ディスプレイには「幸村 精市」と表示されていて、急いで通話のボタンを押す。

『やぁ、仁王』

「なんじゃ」

『部活の中止を知らせにね。こんな雨の中やりたくないだろ?あ、もし仁王がやりたいって言うならやるけど』

「・・・中止じゃな、分かったぜよ」

『じゃあ、そういうことだから』

「くしゅんっ!」

『・・・仁王?』

くしゃみの聞こえた方へ視線を移動すれば、まだ雅治の部屋の中に居るちひろの姿があった。寒いのか、今のくしゃみのせいで鼻水が出てきそうなのか、ずずずーっと鼻をすすっている。

「・・・ほれ、ちーんってしんしゃい」

携帯を片手に逆の手ではティッシュを数枚つかんでちひろの鼻に押し付ける。大人しく鼻水をかむちひろを見て、ほっとしたような表情をする雅治。

『・・・仁王?』

「・・・なんじゃ、幸村」

『今のって、』

「まーくん、ごはん」

「・・・すまんのう。じゃあの、幸村」

プツリと切れた電話の音が部屋に響いているような気がする。

「明日、何もないと良いんじゃが・・・」

「まーくん?」

「・・・プリッ」



――次の日

(まーくん、昨日のくしゃみの子って誰なのかな?俺の電話も切っちゃってさ)
(・・・妹じゃ)
(へぇ。あ、まーくんペース落ちてるよ)
(・・・(最悪じゃ))

 

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