ブレス | ナノ
家族
リビングに続々と家族が集まるのは、多分恐らくきっと、ちひろが居るから。そのちひろはというと、机に向かって一生懸命画用紙に何かを描いている。みんなテレビを見ながらチラチラと横目でちひろを見ているが、そんな事は露知らず手を動かし続ける。
「・・・できた」
どれくらい時間が経ったのか正確にはわからないが、どうやらちひろが必死に描いていたものが完成したらしい。ちひろの表情も達成感があったような顔をしていて、それがまた愛らしい。
「なにを描いたのかな?」
「んっ!」
頭を撫でながら聞く母親に、先程描いていたものを見せる。他の家族も母の後ろに回り込み、画用紙をのぞく。
「・・・かぞく、」
ぽつりと呟いたちひろの言葉にみんな涙ぐむ。嬉しくないわけがなく、感極まってみんなぐしゃぐしゃとちひろの頭を撫でる。咄嗟の事に驚きはしたものの、今度は笑顔を見せた。
「ちひろ、今度一緒に遊んじゃるけぇ」
「!!」
雅治に頭を撫でられながら言われた言葉に、目を輝かせて、首を縦に勢いよく振った。