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お弁当事件A

いつもの様に練習して、相変わらずミーハーな女子達がうるさかった。一瞬だけど、ボールから気がそれて、あっと思った時には既にボールは後ろの方に跳ねながら転がっていて、更に最悪な事に少しだけ開いていた入り口からボールが出て行った。

「赤也、取って来いよぃ!」

「分かってますよ!」

めんどくせぇなって思いながら外に出てボールに追いつくように少し走ったら、コロコロと俺のほうにボールが転がってきた。ここら辺に校舎とかはないから何に当たったのかとボールの転がってきたであろう方向を見れば、小さくうずくまった子供が居た。え、子供?!

「大丈夫か?!」

「・・・ぅ、ッ、!」

近くに寄ってしゃがめば俺に気づいたのか顔を上げた子供。女の子が、目に一杯の涙を溜めながらおでこを押さえている。こんな場所で声を出して泣かれたらどうしようと慌てたけど、女の子は何故か泣かないように我慢しているように見えた。

「悪かった!痛かったよな?えっと、どうすりゃいいんだ?あ、とりあえず湿布でも貼るか!こっち来いよ」

今にも泣き出しそうな女の子をなるべく優しく立たせて、部室に行こうと俺が立った時だった。

「赤也、いつまでボールを捜してるんだい?」

「あ、幸村部長・・・」

「その子はどうしたの?」

「えっと・・・ボールがおでこに当たったみたいで」

「じゃあ落ち着くまで部室に居させれば良いよ。ごめんね、痛かったでしょ?」

幸村部長がそう問いかければ首を横に振った。泣きそうな顔してるってのに。おいで、と幸村部長が言えばその後をついていったので、俺もついていく。テニスコートに戻れば休憩になったのか先輩たちがドリンクを飲んでいた。

「お、赤也ボール見つけるの遅すぎだろぃ!」

「いや、それがボールはすぐに見つかったんっスけど・・・この子が」

「この子?」

ちらりと視線を幸村部長の近くにやれば先輩たちは全員そっちに視線がいく。

「ちひろ!?」

普段飄々としている仁王先輩が、驚いたような慌てたような声を出した。ちひろって・・・女の子の名前なのか?てか仁王先輩とどんな関係?

「ッ、まー、ぐん!」

今まで泣きそうで泣かなかった女の子が、仁王先輩に走って足にしがみつきながらぐすぐすと泣いていた。

「痛かったんか?ほれ、よう見せてみんしゃい」

「・・・もうへいき。まーくん、」

「ん?なんじゃ」

「おべんとう、とどけにきた」

「そうじゃったんか、ありがとさん」

「へへっ」

さっきまで泣いてたのが嘘のように、女の子はへらりと笑った。


 

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