再海 | ナノ

 
雑用の仕事にも慣れてきて、今じゃ夕方には大方の事が終わっている。と言っても私の仕事は主に掃除、洗濯、皿洗いしかないのだが。


07:和服の方とワノ国の遊び事


日がオレンジ色に傾き始めた頃、私は甲板を当てもなく歩いていた。甲板にはそれぞれの仕事が終わった人が飲みながら話してたり、まだ何か作業をしてる人が居たりと結構人が多い。特に何もする事がない私は部屋に戻ろうと船内へ続くドアへ向かった。するとどこかからか、パチン、パチンと音がした。気になって音のする方へ足を動かせば甲板の隅の方で着物を着た人・・・イゾウさんが一人で何かをしていた。

「何してるんですか?」

「!あァ、サラか」

後ろから声をかければ少しだけ驚きながらイゾウさんが振り返った。ひょっこりとのぞけばなにやら将棋らしきものが置かれていた。

「・・・将棋と言ってな、ワノ国の遊びだ」

「イゾウさん将棋できるんですか?」

「まァ、少しだけな」

前々から着物着てたから和が好きなのかなと思っていたがまさか将棋まで出来るとは。それにしてもワノ国を話すときのイゾウさんがどことなく楽しそうな雰囲気を放っているのがちょっとしたギャップだ。

「あの、私で良かったら相手しましょうか?」

「!将棋できるのか?」

「多少なら。私ワノ国に似たような所から来ましたので」

イゾウさんの前に座れば、早速始まった。将棋なんて久しぶりだなと思いながら手を進めていく。

「そういえば、ワノ国に似たような所ってどんなとこなんだ?」

「・・・私の島がワノ国に似ていたのは昔の事なんですけどね。今では科学が発達して和というのが薄れつつあるところです」

「へェ、科学か。なんていう島だ?」

「・・、日本と言う島です」

「“ニホン”?聞いたことないな」

「・・・・・王手です」

「!・・・参った。意外に強いんだな」

「そんなことないですよ」

もう一勝負と言われ、日が海に沈みそうなのを感じながら私たちはまた将棋を指し始めた。将棋をしている間もイゾウさんは嬉々としてワノ国について話していた。本当にワノ国が好きなんだな・・・。そんな事を思っていると、イゾウさんが王手をかけて勝負が終わった。と思ったら今度は懐から何かを取り出したイゾウさん。

「花札は知っているか?」

「あ、はい」

「頼む、一勝負だけでも」

「・・・わかりました」

懐から出されたのは花札で、これまたワノ国から持ってきたものらしい。太陽が完全に沈みそうで、暗いということから食堂に移動して花札を始めた。気が付けば周りにはエースさんやビスタさん、船員さんたちがわらわらと集まっていた。それはもう物珍しそうな顔をして。


 

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