再海 | ナノ
最後のお皿を洗い終わり、私はまた仕事を見つける為に船内へと足を向けた。未だ慣れてない船内を歩き回りながら仕事を探せば、船員さんら数名が廊下の掃除をしてるのを見つけた。
06:掃除と洗濯って家政婦にでもなった気分
「私も手伝います」
近くへ行けば驚いた顔をしながら2人の船員さんたちと目が合った。しかしすぐにサッチさんの時と同様に助かると言って笑顔を向けながら掃除道具を渡してくれた。
「おれはガロンだ。よろしくな新入り」
「エレルだ。迷惑かけるなよ」
「サラです、迷惑をかけないよう頑張ります」
ニッと愛想良く笑ったガロンさんは結構ガッチリとした体格で、逆にエレルさんはクールでどちらかと言えば細身の体格をしていた。仕事内容は簡単で、ただ船内の廊下をブラシで磨けば良いだけらしい。ガシガシとブラシが床を磨く音だけが響いた。黙々と作業したせいか、ガロンさんとエレルさんが早くから始めていたせいか、2時間程度で船内の廊下を磨き終わった。
「いやァ、一人居るだけでも違うもんだな!」
口を大きく開けて笑ってるガロンさんと、やはり対照的に感情を表に出さないエレルさん。案外こういう組み合わせのほうが気が合ったりするのだろうか。
「次に行くぞ」
「おォ、次は洗濯だったか?」
「あの、私も一緒していいですか?」
「・・・好きにしろ」
「ガハハハハ、エレルはもっと愛想よくしなきゃだなァ!」
エレルさんの背中を力一杯叩いてるのか、若干エレルさんが前のめりになって、もの凄く嫌そうな顔をした。二人の後をついて歩けば、角を曲がった所の部屋に入ればこれまたすごい量の洗濯物が山積みにされていた。
「・・・、これ何日分溜めたんですか?」
「昨日やらなかっただけだ」
「一日やらないだけでこんなに溜まるんですか・・・」
「人が多いからなァ!さっさと済ませるぞ」
洗濯と言っても私が居た世界のように洗濯機があるわけでもなく、手洗いでするしかない。この私の身長よりも山積みにされた洗濯物を洗うのかと思うと、自然と溜め息が出てしまった。しかしガロンさんは聞こえてなかったのか、腕まくりをして豪快に洗濯物を次々洗っていた。エレルさんにはさっきの溜め息が聞こえていたのか、少し睨むような視線を向けられた。目が合い、逸らすこともせずになんとも気まずい雰囲気が流れた。
「・・・この量の洗濯をしたくないなら別の場所に行けばいい」
「あ、いえ、大丈夫です」
「・・・じゃあ手伝ってくれるのか?」
「お役に立てるかわかりませんが」
「・・・すまない、助かる」
「!」
少しだけ、エレルさんが微笑んだような気がした。本人は特に気にする事もなく洗濯に取り掛かろうとしていたけど、私はほんわかと心が温かくなった。うん、これから頑張ろう。
「サラ!早く洗濯終わらせるぞ!」
「あ、はいっ」
ガロンさんに呼ばれて近くに行けばタライと洗濯板を渡され、適当に洗えと言われた。