再海 | ナノ
金髪の人と半裸の人が現れて、なんかもの凄く微妙な雰囲気になった。ちらりと白ひげさんのほうを盗み見れば目が合って、先に甲板に出てろと言われた。廊下を一直線に進めば甲板だなんて説明をもらい、金髪の人と半裸の人の横を通って甲板へと向かった。相変わらず金髪の人の視線は痛かった。
甲板に出ればビックリするほどの人数が集まっていた。そして一斉に私のほうを見た。顔に傷のある者も多いし、いかにも海賊だぜって顔の人も居る。つまりは、一斉に見られたら私なんか怖くて思わず身が竦(すく)むわけだ。そんな私の心境を知ってか知らずか、後ろから出てこようとした金髪の人にドンッと押され前のめりになりながら一歩を踏み出した。
03:新しい家族と宴と未だに認めない人
どうもじっと黙って見られるのは嫌いだ。まだ子供とかなら平気・・・やっぱ子供もダメ。あの純粋でキラキラ輝いてる目にじっと見られたら私耐え切れない。だからと言ってこんなガラの悪い人たち、海賊さんたちに無言でじっと見られるのも嫌いだ。これならまだ学校の進路指導とかの先生の方が可愛気がある。
「おめェら、今日から家族になった奴だ」
「あ、サラといいます。よろしくお願いします」
「グラララ、仲良くしろよ」
『うぉおお!』
救世主白ひげ様と言うか何というか・・・。やっと無言からは解放されたものの、未だに私を見る好奇の目は注がれたままだった。ざわざわとたくさんの人の話し声はするが私に話しかけてこようとする人は居なかった。一人一人を見渡してみれば、ばちりと視線が合った。リーゼントのその人は、ニッと歯を見せて笑い近寄ってきた。
「おれはサッチ。四番隊隊長だ!」
「サッチさんですね、よろしくお願いします」
「因みに料理もおれが作ってるから、何か食べたいものがあればいつでも言ってくれよ」
「ありがとうございます」
「!」
にこっと笑ったつもりだったのだがいきなりサッチさんが固まった。サッチさんだけじゃなくて、近くで私の事をチラチラ見てた人も固まった。そんなに私の笑顔は酷いのか・・・ちょっとショックだ。そう思ってたら、ガシッとサッチさんに肩を掴まれ少しだけ痛くて眉を寄せた。
「サラちゃん、」
「なんですか?」
「笑った方が可愛いよ!」
リーゼントが当たるんじゃないかってほど顔を近づけてくるサッチさん。しまいには力一杯(たぶん手加減はしてるが)揺さぶってきた。脳まで揺れ始めそろそろ解放してほしいと思ったときに、ナイスタイミングで先程会ったオレンジ帽の半裸さんが助けてくれた。
「サッチ、サラが困ってるだろ」
「お?あァ、悪い悪い」
「いえ、大丈夫です」
「グララララ!今日は宴だァ!」
相変わらず大きな笑い声の白ひげさんの一言で宴が始まった。嬉しいような照れ臭いような、そんな気分だった。
「おれァエース。二番隊隊長のポートガス・D・エースだ!よろしくな!」
「ポートガス・・・?」
「おう。どうかしたか?」
「あ、いえ、何でもないです。よろしくね、エースさん」
「おーいマルコ!お前も挨拶しろよ!」
ぶんぶんと手を振りながらエースさんが叫んだ。見ればいつの間に甲板の隅へ移動したのか、金髪の人がもの凄い私を睨んでいた。渋々といった様子でこちらに向かってきて、当然私は見下ろされる形になった。
「・・・一番隊隊長のマルコだよい。おれはまだお前を信用してねェよい」
「おい、マルコ」
「ふん」
明らかに嫌悪感むき出しで、すぐに仲間の方へ行ってしまった。
「マルコがあんな顔するなんてなァ・・・」
「まぁ仕方ないんじゃないですか?」
エースさんはすごく驚いて、マルコさんに視線を向けたまま目を大きくしていた。サッチさんの呼びかけでやっと動いてくれて、私もエースさんの後を追うように歩いた。ていうか呼ばれたの私だったんだけどな。