再海 | ナノ
朝食を食べる頃には、さっきまで二日酔いでダウンしてたはずの人たちも普通に食事していて、驚いた。いつもの様にみんなでテーブルを囲んで食事を取れば、相変わらず笑いの絶えない賑やかな食卓だった。
40:いってきます!
朝食を食べ終えてからも一時の間食堂で話していたら、ギィッと開く扉。ゆっくりと視線をそちらへ動かせばシャンクスさんが入り口の所に立っていて、私を見るなりニカッと笑う。
「サラ、もうすぐ行くぞ」
「ん、わかりました」
「じゃあ甲板で待ってるな!」
シャンクスさんは用件だけを伝えると扉を閉じて、甲板へ向かった。私も行かなきゃと腰を上げたところで、手首をつかまれてまたイスへ座りなおす形になる。つかまれた手の方を見れば、エースさんが眉を下げているのが目に入る。
「・・・本当に、行くのか?」
「・・・、大丈夫ですよ。ちゃんと帰ってきますから」
微笑みながら返事をすればゆるゆると引かれていくエースさんの手。なんとなく悪い事をしているような気持ちになるが、いつまでもここに居てシャンクスさんを困らせるわけにもいかず、それではと挨拶をしてから食堂を出る。一度自分の部屋に戻って荷物を持ち、甲板へ向かう。甲板へ向かう途中、医務室の前を通り過ぎようとしたら急に扉が開いた。
「っ、リジーさん」
「あらごめんね、驚かせちゃった?」
「いえ、平気です」
「行くのね。怪我なんてしたら許さないわよ?」
「胆に命じておきます」
へらりと笑えば、ぎゅっとリジーさんが抱き締めてきた。離れた時に笑顔で「行ってらっしゃい」と言われて、私も笑顔で「いってきます」と答える。シャンクスさんが居る甲板へはもう、すぐそこで、なんとなく寂しいような気持ちがふつふつと湧き上がってくる。ギィッと軋む音のなる扉を開ければ甲板にはたくさんの人が居て、私を見るなり「気をつけろよ」とか「怪我するなよ」とか口々に言われて、思わず泣きそうになる。
「ぁ、エース、さん」
シャンクスさんのところまで行けば、近くにはエースさんも居て。先程の事がすぐに頭を過ぎる。どうしようかと迷っていたら、急にエースさんが頭を上げた。
「・・・早く帰って来いよっ!」
「っ、はい!」
目尻に溜まった涙を手の甲で拭ってから、シャンクスさんが乗ってきた小船に乗り込んだ。船の方を見上げれば、みんな笑って手を振っていて。
「いってきます!」
私も負けじと両手を振ってみんなに挨拶をした。ちょっとの間だけ、お別れ。