再海 | ナノ
酔い潰れたサッチさんを踏まないように気をつけながら、みんなから少し離れた場所に立つ。既にほとんどの人が酔い潰れてその場で寝てる中、まだ起きてる人はケラケラと笑いながら何かを話していた。そんな声を聞きながら海の方を見れば、昼間よりも黒くなった海が光を反射して輝いている。
37:広い広い海での道標
(それは、絶対に帰って来いという意味)
これからレイさんに会って、いろんなこと話して・・・その後は・・・。未来(さき)のことを考えるだけで暗くなる気持ちを頭を振って払いのける。俯きながら体を甲板の方へ向けようとしたら、何かにぶつかった。
「!びっ、くりしたぁ・・・」
「・・・」
目に映ったのは独特な髪形をしたこの船の1番隊隊長、マルコさん。まだあの話を聞いた時と同じように眉間にしわを寄せて難しい顔をしている。
「あの、何か用ですか?」
「・・・悪かった」
「、へ?」
「だから、悪かったって言ってんだよい」
何か先程の話しに関することを聞かれると思っていた私は、思わず間抜けな声を出した。難しい顔をしてるからてっきり毒舌でも喰らわされるのかと思ってたのに、出てきたのは謝罪の言葉。しかもよくよく顔を見たら確かに眉間にしわを寄せてはいるがどことなくバツの悪そうな顔をしていて、思わず笑ってしまう。笑った声が聞こえたのかギロリと睨まれたが、ほんのりと耳が赤いせいか全く怖くない。
「別にマルコさんが謝る事じゃないよ。私が隠してたのが悪かったんだから」
「・・・でもよ、」
「でもじゃなーい!私が良いって言ってるんだからもう良いの。そうだね、何か罰がほしいなら・・・」
「・・・」
「私の家族になってほしいかな」
「・・・は?」
ビシッと人差し指をマルコさんの前に出しながら笑えば、何とも間抜けなマルコさんの顔が見える。数秒経って、漸く理解したのか口を動かそうとするマルコさんの唇の前に人差し指を持っていった。そうすればまたゆっくりと口が閉じられた。
「マルコさんが謝りたかったのはずっと私を疑ってたからでしょう?だから、今度は疑わないでほしいなーって」
「・・・」
「ちゃんとした仲間・・・“家族”に、私はなりたい」
「そんなの当たり前ェだろうが、よい」
「うん、そうかもしれない。でもね、私もみんなの事あまり信用してなかったから、これから少しずつ・・・家族みたいに、なりたいんだ」
それが私の願いで、わがまま。苦笑いをしながらマルコさんを見ようと顔を上に上げようとしたら、それより早く頭に温かいものが触れ、上がらなくなる。「マルコさん?」と名前を呼ぶもスルーされて、ぐしゃぐしゃと髪がボサボサになるのも構わずに撫でられた。そして、マルコさんは服から真っ白い紙を取り出した。
「おれのビブルカードだよい。これから、冥王のところに行くんだろい?」
「・・・ありがとう」
私が笑えばマルコさんも笑ってくれて。そんな些細な事が私の幸せ。