再海 | ナノ
レイリーさんに助けて貰い、やっとここが“異世界”だという事に気がついた。見知らぬ土地、私の事を知ってる人なんて居る筈もなくて、それでも今までの生活よりかはマシになるかななんて考えて。
34:狭かった私の世界は変貌を遂げた
一応レイリーさんにも助けてもらったわけだから、違う世界から来たみたいです、と言うのを伝えれば大爆笑されてしまった。あの時は本当に訳がわからず呆然と突っ立っていたら、レイリーさんに手を引かれて歩き出した。
「行くあてはあるのか?」
「・・・ないに決まってるでしょ」
「そうか。どうやらお嬢さんは躾けもなってないようだね」
「アンタには関係ない」
「レイリーだ。シルバーズ・レイリー」
「・・・サラ」
ぽつりと呟いた私の名前がちゃんと聞こえていたのか、レイリーさんはまた笑った。今度は爆笑みたいな笑じゃなくて、微笑むような笑いで。それがどこか懐かしくて、涙を見られたくなくてそっぽを向いた。レイリーさんが歩みを止めるのと同時に、私も手を引かれるように止まった。目の前には船があった。
「ロジャー!」
「おォ、レイリー!そこのお嬢さんはどうしたんだ!?」
船から顔を覗かせたのは、まだルーキーと呼ばれていた頃の“海賊王”ゴール・D・ロジャー。彼は船から梯子を使わずに飛び下りてきた。
「行くあてがないらしい」
「そうなのか?」
「・・・まぁ」
「それに異世界から来たそうだ」
「なに!?異世界だと!」
「ひぃっ」
バッと私の方へ振り向いた彼の顔があまりに近すぎて思わず後ずさった。しかもやたらと目がキラキラしている気がする。若干鼻息も荒く近寄ってくる彼に耐え切れず、ささっとレイリーさんの後ろに隠れれば何をしてるんだと呆れられた。
「異世界人か・・・よし、お前おれの仲間にならねェか?」
「・・・は?」
「ロジャー、彼女は一般人だろう」
「一般人も何も、彼女は異世界人だろう。よし、決まりだ!出航準備ー!」
「え、ちょっ、」
「悪いな、ウチの船長は言い出したら聞かないんだ。まあサラなら大丈夫だろう、私の勘だが」
そうやってがっはっはと笑う二人に連れられて、私の海賊人生がスタートした。