再海 | ナノ

 
「えっとですね、驚かないで聞いてほしいんですけど、私この世界の人間じゃないんです」

そう言った途端に、何とも言えぬ空気が漂った。マルコさんに至っては眉間のしわが増えたし、エースさんサッチさんやほとんどの人は目を見開いた。話を進めるか、少し待っているか悩んで親父さんを見上げれば、なんとなくだけど話を進めろと言っているような気がして、私は口を開く。


33:ちっぽけな私の世界


私の世界には、まず海賊は居ないし悪魔の実なんてものもない。平和と言えば聞こえは良いが、ただ同じような毎日を繰り返しているだけにすぎない。誰もが愛想笑いをし取り繕い生活をする、そんな世界です。

私の家庭はどこにでもあるような一般的な家庭、だったんです。

「・・・なんで過去形なんだよい?」

「・・・、私が15歳になる頃でした」

両親の関係が少しずつですが、ずれてきたんです。日が経つにつれ、両親は毎日のように顔を合わせるだけで口喧嘩をするようになって、離婚をしたくても私が居たからできなかったんです。二人とも愛人を作り昼間から家に上げたり・・・。その頃から私も家に帰りたくなくて、いつもファミレスに居たりして、少しずつですが何かが変わってきたんです。

夜も家に帰りたくなくて、ずっと路上に座り込んでた日もたくさんありました。そんな時、流れ星を見たんです。

「流れ星が流れてる間に、3回願い事を唱えると叶うっていう迷信があるんです」

そんな迷信を信じるような年齢でもなかったんですけど、1回だけ願ったんです。

“ここじゃない場所に行きたい”

願った直後は何も起こらなかったんですけど数日後、たまたま家に帰って寝ようと思ったんです。久しぶりに帰った家は相変わらずで、私はすぐに自室に閉じこもり、布団を頭まで被って寝ました。何も聞きたくなかったから。

「・・・サラ、」

「大丈夫ですよ、シャンクスさん。今は平気ですから」

「・・・」

それから目が覚めたら、森の中に居たんです。私自身何が起こったのか理解出来なくて、森の中を歩いてたら山賊に出会いました。殺すだの生け捕りにするだの物騒な言葉を言いながら山賊たちは近づいて来て、私は必死に逃げました。途中何度も転んだりしたんですけど、それよりも逃げなきゃという意思の方が勝っていたんです。どんどん走っていると、森を抜けて、海へ出たんです。

「・・・そして、“冥王”シルバーズ・レイリーに出会いました」

それは今から、この世界からしてみれば約数十年も前の話で、私の世界からしてみれば3年程前の話になります。


 

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