再海 | ナノ
私が“赤髪”さんという人が居ると聞いたのは前に立ち寄った島で会ったミホークさんからで、結局誰なのか教えてくれなかった為に親父さんにも聞きに行った。しかし何故か親父さんも誰かなんて教えてくれなくて、私はそのこと自体を忘れかけていたのは秘密にしておこう。なんでも船員さんが言うにはその赤髪さんが近くまで来ていて、ついでに親父さんに挨拶をしたいとのことらしい。
31:人生そう簡単に上手くいきません
船員さんが親父さんに報告が終わる頃には既に甲板には全船員と、隊長さん達が並んでいた。ナースさん達は親父さんが隠れてろと言い、それからのナースさん達の行動は早かった。あっという間に親父さんの周りには私と隊長さん達しか居なくなっていて、未だに脳が動かないというような感じでそこに突っ立っていたらマルコさんに後頭部を叩かれた。
「サラもナースと居ろよい」
「え、なんで?」
「・・・はァ」
あからさまに呆れて溜め息をついたマルコさんを、無性に殴りたい。まあ殴った瞬間にカウンター攻撃されそうだからやらないけど。私が思ってることなんてお見通しと言うように、グラグラと低い笑い声が聞こえる。親父さんの方を見上げれば、何故かゆっくりと頭を撫でられる。
「おれが良いって言うまで隠れてろ」
「・・・どうしても?」
「どうしても、だァ」
「・・・じゃあ隠れて見てるのは?」
「まァそのくらいなら良いだろう」
「ほら、さっさと行けよい」
とりあえず親父さんの言う事はちゃんと聞かなきゃいけないから船内に続くドアのところにこっそりと隠れた。ここならばっちり見れるだろうし。わくわく、と言うわけではないが多少の好奇心は止められない。今か今かと待っていたら、突然遠くに居た船員達がバタバタと倒れ始めた。
「・・・は?」
倒れていく人の間に、ちらりと赤い髪が見える。マルコさんが何か言っているような気もするが、それよりも私の視線は前を見据えて動かなくなってしまった。そんな時。
「邪魔だ」
「・・・ぅわっ、」
後ろから体格の良い船員に背中をドンッと押され、ドアを思いっきり開け放ち、私は床と対面した。あの場に居た私も悪いが押さなくても良いだろうと文句を言おうと立ち上がろうとした背後に、また何かがのしかかる。おかげでまた私は床とご対面。
「ちょっ、なに・・」
体の上に乗っかっているものを横に転がせばそれは先程ぶつかってきたであろう船員で、気絶している。やっとの思いで立ち上がったのも束の間。
「・・・サラ?」
「え・・?」
名前を呼ばれて振り返れば、そこには目を見開いた赤髪の人が立っていた。