再海 | ナノ
ナースさん達との話は終わり、ゆっくり部屋で寝ていたら大きな揺れで目を覚ました。何事かと思って耳を澄ましてみればどうやら戦闘が始まったらしく、銃声や刀がぶつかり合う音が聞こえてきた。一体どこの誰だ。
26:助けるのはヒーローの役目
急いで部屋を出て最初に向かう先は医務室の隣のナース室。今この船に乗ってる人と言えば、数人の隊長達と船員、それにナース達だ。まあ戦闘経験がなくても男ならある程度どうにかなるだろうが、ナース達は違う。そんな事を考えながら、ナース室を目指して走った。
「大丈夫ですか、みなさん!」
「!サラちゃん・・・」
驚かせないようにゆっくりとドアを開けたら、ナースさん達は奥の方に隠れていた。その中から出てきたのはリジーさんで、どこか青ざめた顔をしていた。
「どうかしたんですか?」
「・・・それが、エミリが倉庫に行ってから戻ってこないの」
「エミリさんが?・・・分かりました、私が行って来ます。みなさんはここから絶対に出ないでください」
「危険よ?」
「へーきですよ。私、強いですから」
にへらと笑ってみせたらリジーさんは苦笑した。部屋を出る時に、後ろから気をつけてと言われたのが、少し嬉しかった。
「“この扉は鉄壁の扉。敵の侵入は許さない”」
ドアに触れていた手を離し、私は急いで甲板へと向かった。倉庫のある場所は船尾の方で、甲板を通らないといけないような造りになっているため、エミリさんが居るとすればまだ倉庫のはず。甲板に走って出れば、そこでは既に敵が乗り込んできていて、ジョズさんビスタさんと十数人の船員しか居なくて苦戦を強いられていた。
「ビスタさん、少しお願いがあるんですが」
「サラ・・・?!」
「倉庫にエミリさんが居るらしいんです」
ぼそりと呟けばビスタさんにはちゃんと聞こえたようで、すぐに頷いて援護に回ってくれた。急いで倉庫まで向かうも、敵も私の存在に気づいたらしく女だからという理由から何故か標的にされつつある。なんとも理不尽だ。近づいてきた敵はビスタさんが相手をしてくれているので、私は鵺を手に遠くから走ってくる敵の脚を狙った。倉庫に着けばビスタさんがここは任せておけなんて戦隊モノのヒーロー(ver紳士)のように言うので、私は素直に従い倉庫の中にこっそりと入り込んだ。
「エミリさん、居ますか?」
「・・・サラちゃん・・?」
「!良かった、無事だったんですね」
「どうしてここに・・・外ではまだ戦ってるんでしょう?」
「はい。今は倉庫の前にビスタさんが居ます。それより、私がまたここに来るまでドアを開けないでくださいね」
「え?」
「私、能力者なんですよ。私が言った言葉には力が宿って、それは絶対となる。だから、信じてください」
「・・・分かったわ。でも、怪我なんてしたらダメよ?」
「最善を尽くします」
少し引きつった笑いになったせいか、エミリさんは心配するように眉を寄せるだけだった。