再海 | ナノ
島へついた途端に、みんなは我先にと町へと繰り出していった。私もこっそり島に降りようかと思ったら、背後からマルコさんの視線がヒシヒシと痛いほどあてられた。結果、私はナースさんたちと一緒に船でお留守番となった。
25:ナースさん達と女同士の内緒話
ほとんどの船員さんたちが降りた船はどこか物寂しくて。私も暇になったので部屋で本でも読もうかと足を進めていた。丁度医務室の前を通り過ぎた時に、背後から名前を呼ばれた。
「リジーさん、どうかしたんですか?」
「ねぇ、どうせ暇でしょう?私たちとお話しない?」
「・・・わかりました」
一人で本を読んでいるよりもナースさん達と話してたほうが楽しそうだし、なんか医務室って暖房とかありそうだなって。そんな軽い気持ちで医務室に入れば、いつもの医務室とは違った雰囲気が漂っていた。ベッドは隅に押しやられ、医薬品のにおいは注がれていた紅茶の香りで消されていた。何よりも、部屋の中央にはテーブルとイスが設置されていてどこかのテラスを思い出すような、そんな雰囲気だった。
「ささ、座って」
リジーさんにイスを引かれ、大人しくそこに座れば、私の分の紅茶をエミリさんが注いでくれた。因みにナースさん達と言ってはいたものの、集まったのは私を含めて5人だけだった。
「ねぇ、サラちゃんってどうやってこの船に乗ったの?」
「私もそれ気になってるー」
「えっと、あの、」
「別に言いたくないなら言わなくて良いのよ。誰にも秘密の一つや二つあるものでしょう?」
「リジーさん・・・。すみません、今はまだ、言えないんです」
「あら、そうなの?じゃあ言えるときにはちゃんと言ってよね」
「そうそう。もう私たちの妹同然なんだから!」
綺麗に微笑むナースさん達は、きっと男から見たら本当に美しいんだろうなと、なんとなく思ってしまった。昨日だってたまたま通りかかった部屋からどのナースさんが一番好みだとか言う会話が聞こえたのも確かだし。
それから話しは弾んで、次第に恋愛話に発展し。
「サラちゃんは好きな人居ないの?」
「え、私ですか?・・・居ません、ね」
「そうなの?じゃあじゃあ、初恋は?」
「初恋・・・」
「その顔はあるのね?話しなさい、サラ!」
リジーさんは身を乗り出して、エミリさんは目をきらきらと輝かせて、残りの二人を見ても同様に楽しみという感じだった。ぐっと押し黙っていると、リジーさんが早く早くと急かすため、私はぽつりぽつりと喋りだした。
「・・・あれは、私が山賊に追われてたときでした。・・本当に怖くて、でも足を止めたら後ろから追ってきてる山賊に捕まってしまう。そんな時、私こけちゃったんですよね。そしたらすぐ後ろまで来ていた山賊に取り押さえられて、殺されるかと思いました。・・・でも、あの人が助けてくれたんです。本人は男が女を襲ってるのが気に食わなかったと言ったんですが・・・。それからその人の乗ってる船に乗せてもらって。あの人が居なかったら、私は死んでいたから。・・・好き、と言うよりも感謝の方が強いですかね?」
喋り終わって紅茶を一杯飲むと、ふとナースさん達が黙ったのが気になって視線を上にあげれば、驚くことに目に涙を溜めていた。
「ど、どうしたんですか!?」
「怖かったでしょう、サラ」
「大丈夫よ、これからは私たちもサラちゃんの事護るから!」
「いつでも頼ってね」
「何かあったらすぐに言って頂戴ね!」
「はい・・・!」
その後もナースさん達の恋愛話を聞いたりして、少しずつだけど、確実に私とみんなの距離が近くなったのかなと思った。あぁ、今もあの人は元気で居るだろうか。