再海 | ナノ
「えっと、龍族のハクです。ハク、ご挨拶」
「・・・」
普段と変わらない・・・いや、少しだけ嬉しそうなサラの隣には、真っ白い鱗が敷き詰められている龍が一匹。エースなんかはすげェと目を輝かしているが、今まで生きてきて龍なんて初めて見るもんだからかいまいち頭の整理が追いつかない、よい。
21:たった数分されど数分
さっきからサラは龍に向かって挨拶をしろと言っている。が、龍が喋るわけもなく。そんなこと分かりきっているはずなのに喋らせようとするってことは、コイツ喋れるのか・・・?じぃっと見ていたら、ふとその龍と目が合った(ような気がした)。
「・・・認めない、」
『!?』
男とも女とも取れるような中性的な声。この船にそんな声の奴は乗ってないから、だとすると今のは・・・、
「サラがまた海賊船なんかに乗ってるの、反対だよ。怪我したらどうするのさ」
「私なら大丈夫だよ?」
「万が一ってこともあるだろ。それに、なんで白ひげ?」
「だってここに来ちゃったんだもん。仕方ないでしょう」
「・・・親父の事、知ってるのかよい?」
「あ?なにお前、なにその髪型」
「・・・(イラッ)」
「ハク!」
見た目は何とも神々しさがあるが、中身はただのクソガキだ。若干イラッとしたものの、エースが喋ったと叫んだせいでおれの思考は一時停止。そう、確かにこの龍は喋った。今までいろんな書物を読んで、龍にまつわるやつも読んだことがあるが、龍が喋るなんてことは一度たりとも書かれていたことはなかった。
「あ、それは私の能力、です」
「サラの?」
「すっげぇー!」
こくりと頷いてから、一定の距離の中に居れば話せるようにしたんだと。何とも便利な能力だよい。
「サラ、今からでも遅くない、ここを出ようよ」
「だめ」
「なんでっ」
「私がここに居るって決めた、それだけだよ。ハク、私なら平気だよ」
「・・・――わかった。でも、何かあったらすぐに呼んでよ」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、これ」
龍が尻尾をサラの方に差し出せば、そこから取り出したのは、一本の刀。銀色に鈍く光り、それでいてどこか妖しくて。でもそれ以上に、この数分の間で起こった事が夢のようで、理解が追いつかなかった。