再海 | ナノ

 
甲板へと走っていけば、既にガロンさんにエレルさん、他の船員さん達が洗濯物を取り込んだ後で、今もなお樽を倉庫に直したりと慌しく動き回っていた。空を見上げれば見事に私たちの上空だけどんよりと分厚い雲に覆われていた。


20:曇り空から会いに来ました


船員達は慌しく動き回っているにも関わらず、私より先に甲板へと走っていたマルコさんは、ただじぃっと空を見ているだけだった。眉間にしわを寄せて、何か考えるように。

「嵐、ってわけじゃなさそうですね」

「!・・・サラはわかるのかい」

「なんとなく、ですけど」

雨が降るわけでもなく、風が強くなるわけでもなく、ただ曇り空だけが広がる不気味な空。一体全体この船になにが起きているのか。

「マルコ!サラちゃん!嵐でも来るのか!?」

「・・・わからねェ、」

途中からエースさんとサッチさんがバタバタと走りよってきた。なにが起きてるんだ、どうしたらいいんだと二人して騒ぎたてまくる。正直に言うとうるさいというのが私の感想だ。二人から視線を外してもう一度空を見てみると、ぼんやりと、でも確かに“何か”が動く影が見えた。

「・・・あ゙、」

そんなに大きくないが、近くに居た3人には私の声が聞こえたようで不審な目つきで見てきた(主にマルコさんが)。しかしそんな事に構ってる場合ではない。私はここに居ると、伝えなくてはいけない。ごそごそと服の中から私たちには聞こえない笛を取り出した。

「なんだよい、そりゃあ」

「あ、おれ知ってる!なんでもおれ達には聞こえない笛・・だとか」

「はァ?じゃあ誰が聞くんだよ」

3人が話しているのを横目に、肺一杯に空気を吸い込み、笛を鳴らした。そして、ゆっくりと曇り空が割れていった。

「んなっ!?」

「おいおい、なんだよあれ!」

「・・・」

現れたのは、まだ少し小さめだが人間からしてみれば大きい、龍の子。真っ白な体をうねらせ、空からゆっくりと降りてきた。いつもうるさいエースさんとサッチさんも、動き回っていた船員達も、みんな時が止まったようにフリーズしていた。そんなのを気にも留めずに、龍は私の前まで降りてきた。

「久しぶりだね、ハク!こんなにおっきくなったんだね」

「グルルルル」

ぎゅっと抱きつけば、のどを鳴らしてその喜びを表した。周りのみんなは、未だ動かぬまま。


 

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