再海 | ナノ
マルコさんの睨みが怖すぎて紛らわすようにへらりと笑えば、眉間を親指と人差し指で押さえながら私に聞こえるくらい大きな溜め息が返ってきた。
19:これも大切に思うが故
溜め息の後の微妙な沈黙を破ったのは親父さんの笑い声。相変わらず体内に響くように低くて、ずっしりとした笑い声。次いでマルコさんが少し怒ったように親父、と。
「・・・とにかく、もし次の島で降りようもんなら今後一切島には降りさせねェからない」
「・・・」
「睨んでもダメだよい」
「・・・ケチ」
「おれはサラのためを思って言ってるんだよい」
「・・・親父さん、」
「グララララ!今回は諦めろ!」
「そんな・・・!」
親父さんの一言に、勝ち誇ったように笑うマルコさんが憎たらしくてしょうがない。こうして私の次の島への上陸はなくなった。まあ別に観光とかしたいわけじゃなく、ただ単に陸地に居たいだけなんだけどね。船の上っていつも揺られてるからたまには揺れない足場の上でいろいろとしたいわけなんだけれども。今更それを言ったところで上陸させてくれるわけもない(主にマルコさんが)ので口には出さなかった。
「そういやァサラは親父に用事かい?」
「へ?あー、・・・暇だったのでお話でもしようかと思いまして」
「そうかい。じゃあおれは戻るよい」
部屋を出る為に踵を返してドアに向かったマルコさん。ドアノブに手をかけようとした瞬間、ドアが勢いよく開いた。が、別にマルコさんがドアにぶつかるなんて事はなかった。ちょっと楽しみにしてたのに。急いで入ってきたのは前に1番隊の稽古の時にちらっと見た人で、まだ結構若いと思う。
「どうしたんだよい?」
「そ、それがっ、いきなり天気が悪くなったので!」
「・・・すぐに行くよい」
2人はすぐに部屋を出て行き、ドアだけがちゃんと閉められもせずにギィギィと音を立てていた。慌しさからか呆然としていたが、すぐに先程の言葉が脳裏をよぎった。天気が、悪く・・・?
「・・・あーっ!洗濯物!」
「グララララララ」
後を追うように急いで甲板へと走った。背後からは至極愉快そうに笑う親父さんの声が聞こえた。