再海 | ナノ
「そういえばサラは武器買わないのか?」
エースさんが発したこの一言で、今日の予定が決まってしまった。
15:新しい武器はあっちこっちどっち
甲板に居た隊長さんたちにもその声は聞こえていたらしく、ぞろぞろと集まりだした。というか私基本的には雑用のはずなんだけど。
「確かに武器は持ってた方がいいねい」
「そうと決まれば早速買いに行こうか」
フローラルの香りがしたかと思えば、ビスタさんに右腕をつかまれ有無を言う事も出来ぬまま船から降り町へ向かった。因みに甲板に居た他の隊長さんたちはマルコさんエースさんイゾウさん以外は各々の行動に移り私が目で助けてと訴えるものの笑顔で流された。森を抜け町へ出ると真っ先に武器屋へ。なかなか大きな武器屋らしく、店の中には大量の武器(剣から槍、斧、銃、ライフルなど)が並べてあった。
「サラはどんな武器が良いんだ?」
「剣が良いんじゃないか?剣術ならおれが教えてやるぞ」
「銃ならおれが教えてやるがな」
「護身用だ、使いやすいのを選ぶと良いよい」
「・・・わかりました」
店の中を見て回っているとたまに視線が送られてくるのがわかる。そりゃ四皇の白ひげ・・しかも隊長たちが4人も居たら注目されるのも当たり前と言えば当たり前か。隊長さんたちは特に気にしてないのか、騒ぎながら(主にエースさんが)少し離れたところで剣やら銃を好き勝手に構えたりしていた。
それにしても私の武器、か・・・。銃が置いてある場所へ行けばどれも惹かれるものがない。しかしきっと手ぶらじゃ船には戻ってくれないだろう。うーんと頭を悩ませていたが、ちらりと見えたそれに、意識が持っていかれた。
「・・・これは、」
「お嬢さん、銃を買われるんですか?」
「!・・・はい」
「でも、それは止めた方が良い」
「どうして?」
声をかけてきたのはここの店主の人らしく、私がこの銃を手に取った事があまりよろしくないらしい。店主が私に声をかけたのに気づいた隊長さん達が近づいて来た。
「それは所持した者を呪い殺すといういわくつきの奴だ」
「そんな危ねェもんダメだぞ、サラ!」
「・・・、これにします」
『!?』
「しかし・・・!」
「じゃあ、かけましょうか。私が勝つか、この・・・鵺(ぬえ)が勝つか」
弾を3つセットして、クルクルと回せば弾がどこに入ってるのかなんて分からなくなっていて、それを私自身の左肩に当てた。確率は五分五分。深く息を吐いてから、ぐっと引き金を引いた。
「・・・私の、勝ちですね」
「・・・あァ好きにするといい」
「ありがとうございます」
店主は腰が抜けたのかその場にへたり込み、冷や汗を流していた。隊長さんたちの方へ向き直れば、マルコさんが鬼のような形相で私を見ていました。それはもう般若が降臨したんじゃないかってくらいの迫力で。
「危ねェことしてんじゃないよい!」
ピリッと空気が震えた。よく見るとエースさんもビスタさんもイゾウさんも心配そうな表情だが、どこか怒っているような気もした。
「ったく・・・本当にそれで良いのか?」
「・・・うん」
「銃ならおれの教える幕はないというわけか」
「ごめんね、ビスタさん」
「謝ることじゃないさ、気にするな」
「さ、船に帰るか」
どこから出したのか、イゾウさんは煙管を銜えながら既に店を出ようとしていた。隊長さんたちも後に続いたので私も急いで立ち上がり、お金を渡して追いかけた。ついでにホルスターも購入して、晴れて私の腰に銃・・・鵺が装備された。