再海 | ナノ

 
あの事件以来、私は雑用係兼戦闘員になった。まあ戦闘員と言っても下っ端の相手だから取立て目立つわけでもなく、能力を使うことも滅多になかった。


11:麦わら帽子の弟くんとブラコン兄


雑用の仕事にも慣れ始め短時間で終わるようになったこの頃。何もしないでぼーっとするのも好きだが、私はここ最近の船以外・・・つまりは世界での出来事を知らない。ということで、ここ最近仲良くなった(と言っても相変わらず眉間の皺は変わらないが)1番隊隊長であるマルコさんの部屋の前まで来た。

――コンコン

控えめに叩けば中から開いてるよいと声がした。ドアを開けて見れば殺風景と言うか、必要最低限のものしか置かれていない部屋。その真ん中に置いてある机に座り本を読んでいたマルコさんと目が合った。

「何の用だよい」

「最近の新聞をお借りしたいと思いまして」

「新聞・・?」

「はい。できれば手配書も一緒だと嬉しいです」

「・・・新聞はそこの棚の一番下の引き出し、手配書はその上の引き出しだい」

「ありがとうございます!」

渋々といった感じで新聞と手配書の場所を教えてくれたマルコさんにお礼を言い、最近の新聞と手配書を持って部屋を出た。私に与えられた部屋に行き、一番新しい新聞から読み始めた。ペラペラと紙をめくる音だけが響いていたが、そこにノックの音が混ざった。

「はい、どちら様?」

「サラ!釣りやろーぜ!釣り!」

ドアを開ける前に返事が返ってきて、名乗られなくてもエースさんだとわかった。ゆっくりとドアを開ければ満面笑みのエースさんが釣竿を持って立っていた。多少心苦しくはあるが、私は今日新聞を読むのだと断れば、じゃあおれも読むと一緒に新聞を読むはめになってしまった。

「エースさんって新聞とか読まなさそうですね」

「あー、確かに読まねェな」

現に今も新聞ではなく手配書をペラペラとめくっているだけで、実につまらなそうである。再度新聞に目を落とせば、どこかの島で海賊が大暴れした事や海軍の勝利など細々としたものがいくつも載っていた。そんな中、エースさんがおっ、と声をあげた。

「・・・どうしたんですか?」

「これこれ!」

「誰ですか?」

エースさんがバッと手配書を前に出してきて、それには麦わら帽子をかぶって笑っている少年が写っていた。小首を傾げて聞けば、キラキラと目を輝かせ、エースさんが語りだした。

「ルフィっていってな、おれの大事な弟なんだっ!」

手配書にはモンキー・D・ルフィと書かれていて頭の隅でとある人物が思い浮かんだが、楽しそうに話すエースさんの話をちゃんと聞くことにした。なんとルフィくんは初めての手配書で3千万ベリーの賞金をかけられたそうだ。しかもまだ17歳だとか。エースさんの口からは次々とルフィくんとの幼き頃の思い出などが語られ、最終的に私が部屋を出れたのは空が真っ暗に染まってからだった。


 

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