再海 | ナノ
ギリギリのところで刀を止めてやれば、敵の船長が戦意を喪失し早々に退散していった。これで一件落着と思ったのだが、そういうわけでもなかった。
10:別に聞かれなかっただけであって隠してたわけじゃない
敵船も遠くへ行き大砲も届かない位置までいった頃、私も雑用の仕事に戻ろうと船内へ行こうとした所、マルコさんエースさん、ジョズさんら隊長さん達が入り口前に立ち塞がった。
「・・・あの、私仕事があるんですが」
「・・・お前、能力者だったのかい」
「あー、まあ一応」
「すげェな!おれなんか操られてたのによ!」
「テメェはもう少し危機感持ちやがれ!おれのリーゼントが危うく焦げるところだっただろうが!」
ギャアギャア騒ぎ始めたエースさんとサッチさんに、マルコさんから拳骨がくだり大きなこぶをそれぞれ一つ作っていた。なんとも痛そうだ。そんな中、グラララと大きな笑い声が響き、それに導かれるかのように隊長さん達が白ひげさんの前へと移動を始めた。もちろん私も仕事に戻ろうかと思ったのにジョズさんに腕をつかまれズルズルと連行された。白ひげさんが見守る(見てる)中、私は隊長さんたちの前になぜか正座してます。そして若干マルコさんから覇気が出てる気がします。
「なんで能力者だって黙ってたんだよい?」
「別に理由なんてありません。聞かれなかっただけです」
「・・・何の実を食った?」
「コトコトの実」
「コトコト?聞いたことねェな。どんな能力だい?」
「・・・言霊、ってわかりますか?言葉にはそれぞれ、不思議な力が宿ってるんです。コトコトの実は言霊を操る・・・つまり、私が言ったことが現実になる能力です」
「・・・胡散臭ェな」
「やってみますか?」
マルコさんは更に眉を寄せ、他の隊長さんたちもあまりいい顔はしていない。まあ例外としてエースさんとサッチさんの顔はキラキラ輝いているように見えるが。とりあえず能力を見せないと納得できないという人が多いようなので仕方なしに能力を使う。あんまり使いたくないんだよね、本当は。何かいい道具はないかと周囲を確認すれば、ガラスのコップが置いてあった。それを手に取り隊長さんたちに向き直り、手からコップを離した。
「おい!」
「“止まれ”」
『!!』
「グララララ!どうやら本物みてェだな」
地面に向かって落ちていたコップは私の一言に反応して、空中で止まっている。その光景に目を見張る隊長さんたちと、笑い出す白ひげさん。エースさんはすげェなんて叫びながらコップの周りをぐるぐると回りながら見ていた。
「白ひげさん、こんな私でも必要としてくれますか?」
「当たり前ェだ、アホンダラァ!」
「ありがとうございますっ」
頭を下げればグラグラと笑う声と、頭にずっしりと重みがかかった。重みの正体は間違いなく白ひげさんの手で、家族なんだからと、たったそれだけの言葉で私はどうしようもなく泣きそうになった。
「なァ、」
「どうした、エース」
「サラはなんで親父のこと白ひげって呼んでるんだ?」
「・・・え、」
「家族になったんだから親父って呼べばいいだろ!」
「えっと・・、」
「グラララ・・・確かにそうだなァ」
「でも、私、」
「てめェの人生だ、てめェで決めろ!」
「!」
「サラ!遠慮なんて要らねェんだぞ?」
「っ、・・・お、親父・・、さん・・・!」
「グララララララ!!」
親父さんの大きな笑い声が、辺りの海に響き渡った。
これからはこの力、親父さんの、大切な人のために使おうと心の中で誓った。それと、少しだけマルコさんから今までのように疑われているという感じが減ったとか。