toi et moi | ナノ


――カランカラン

「いらっしゃいませーって、マルコか」

「おれじゃ悪いかよい」

「別にそんなんじゃないけど・・・」

toi et moiの扉を開けて入ってきたのはマルコで、相変わらず眠そうな目をしている。これを言ったら確実に拳骨が飛んでくるので絶対に言わないが。当たり前のようにカウンターの奥の席に座ってコーヒーを注文する。そんなマルコに、今朝の出来事を本当に小さい声で話した(そうしないと両親がうるさいから)。

「あァ、やっと付き合うのかよい」

「ばっ、マルコ!」

「え、なになに、彼氏できたの?!」

「なん、だと・・!?父さんは認めないぞ!」

マルコの横を陣取って座る母と、その後ろで騒ぎ始める父。あぁ、だからこの二人には言いたくなかったのに。じろりとマルコを見れば、ゆるりと笑みが浮かべられていて確信犯だという事がわかる。反論しようとした時に、またカランカランと店へ入店する音が響いた。

「あら、エースくんじゃない!いらっしゃい」

「どうも」

「ようエース、良かったな上手くいって」

「なっ」

「もしかして・・・エースくんがシュリの彼氏?」

きゃっきゃと一人はしゃぐ母の姿は恋バナしてる女子高生みたいだ。そんな母の態度に驚きつつも丁寧に返事をしていくエース先輩を見ていたら、バチリと目が合って、にやりと笑われた。たったそれだけのことなのに、頬には熱が集まりだして、鼓動もリズムを早めた。


――カランカラン

またしてもお客かと思ったら、赤い髪が目立つシャンクスさんだった。シャンクスさんが来た事により、両親はシャンクスさんの元へ、マルコも母に連れられて移動してしまい、エース先輩と微妙な二人きりの空間が生み出される。

「えっと、エース先輩は何か飲みますか?」

「・・・」

「エース先輩?」

「・・・なァ、おれ達付き合ってるんだよな?」

「え、っと、・・・はい」

「じゃあさ、その先輩ってのやめようぜ」

「でも、」

「おれが良いって言ってんだから、良いんだよ」

じっとエース先輩に見られて恥ずかしい事この上ない。それにエース先輩は何気に頑固らしく、一度決めた事は必ずやり通す。名前を呼び捨てで呼ぶのなんて女友達かマルコぐらいしか居ないから、なれてないしもの凄く恥ずかしい。でも、・・・。

「っ、え、・・・エース」

「良く出来ました」

「・・・、恥ずかしい」

「そのうち慣れるだろ!」

子供を褒めるように優しく頭を撫でるエース、に、また胸が高鳴った。どきり、どきり、と心臓の音がエースに聞こえるんじゃないかって思うほど、私の心臓は脈打ってて。

「ほお、シュリの両親も認める公認カップルか」

「っ!!」

ぬっと現れたのはシャンクスさんで、ニタニタと笑いながらエースの方に手を回している。いきなり現れたシャンクスさんのせいで、更に加速した心臓は、どうしようもなくて。次第に収まるのを待っていれば、シャンクスさんはすぐに座っていた場所に戻ってみんなと談笑をしている。そんなみんなを見て笑っていると、エースに名前を呼ばれる。

「なに、んっ・・・?!」

エースの方を見ようとしたら思ってた以上にエースが近くに居て、驚く前に後頭部を押さえられて、気が付けばキスをしていた。それはただ触れるだけのキスだったけど、私にしてみればファーストキスだったわけで、かぁっと顔が赤くなるのが分かった。

「シュリ、顔真っ赤」

くすりと笑ったエースの表情にまた、どきり、と心臓が高鳴った。


君と僕の物語

 

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