toi et moi | ナノ


シュリの店から家に帰っても、頭の中はずっとシュリの事ばっか考えている。今まで付き合った事は何度かあるけど、ずっとそいつの事を考えてるなんてことはなかった。

「・・・ハァ」

口からは溜め息が出て、つい先程ルフィにどうかしたのかと問われた。別におれだって溜め息つきたくてついてるわけじゃなくて、なんかよくわかんねェけど溜め息が出てくる。そんな時、テーブルの上に置かれていた携帯が音を立てて震えだす。手に取って画面を見てみれば“マルコ”と表示されている。

「・・・珍しいな、マルコから電話してくるなんてよ」

「別にこれといって用事はないんだがねい」

「じゃあなんで電話してきたんだよ」

「・・・シュリの事だけどよい、」

「・・・」

「あいつ、意外とモテるからな。先週もテニス部の部長に告られたらしい」

「っ、だから、なんだよ・・・」

「それだけだよい、邪魔したな」

ツー、ツー、と電話が切れた音がしたけどそれよりも、マルコの言葉が頭から離れなくなった。そりゃ確かにシュリは可愛いし、気も利くし、話しやすいし・・・モテるのも十分わかる。

「・・・、ハァ」

本日何回目か分からない溜め息が、また出た。


翌日、未だに寝ぼけているルフィを後ろに乗せてチャリで学校へ。チャリに乗ったまま靴箱に行き、ルフィを無理矢理起こしてからチャリ置き場に急ぐ。疎らに止められたチャリの間に自分のチャリを入れて鍵をかけ、また靴箱へ移動する。靴箱で靴を履き替えていると、「ルフィくん!」と聞き覚えのある声がルフィの名前を呼んでいる。それは靴箱をはさんで向こう側から聞こえてきて、見てみればやはりルフィとシュリが居た。

「シュリ、」

「あっ、エース先輩!おはようございます」

「はよ」

「シュリちゃん!」

「?・・・あ、先輩・・・」

挨拶もそこそこに遠くから誰かが走ってきている。シュリの名前を呼びながら。それがなんだか面白くなくて無意識のうちに眉間にしわが寄る。

「この間の返事、まだかな?」

「えっと、その・・・」

「別に彼氏とか居ないんでしょ?試しでいいからさ、おれと付き合わない?」

目の前の男はおそらくテニス部の部長だろう(テニスバック持ってるし)。ちらり、と男はおれに目を向けて、馬鹿にするように口角を上げた。気に食わねェ。そう思ったら体が勝手に動いていて、グイッとシュリを自分の腕の中に閉じ込めた(その際にルフィが床とご対面したが、まァ大丈夫だろう)。

「え、エース先輩・・・?」

「ンだよ、邪魔すんなよ」

「うるせェ。シュリはおれのだ」

睨み返せば舌打ちをして男は去っていく。そいつの背中をずっと睨んでいたが、不意に腕の中でもごもごと動く存在。

「っ、シュリ・・・」

パッと腕を放せば少しだけシュリが後退り、真っ赤に染まった顔が見える。その時漸く、自分のした行動を思い出した。

「わ、悪ィ・・!」

「いえ、」

お互いが耳まで真っ赤にしながら呆然と立ち尽くす姿は、さぞおかしかっただろう。遅刻ギリギリで駆け込んでくる生徒が横目で見ながら通り過ぎていくが、今はそんな事どうでも良くて。

「・・・シュリ、おれ・・、シュリが好きだ」

「・・・!!」

これでもかってくらいシュリは目を丸くして、先程よりも更に赤くなって、口をパクパクと動かしている。そんな姿に苦笑して、「いや、忘れてくれ」と言ってから靴箱を後にしようと背を向ければ弱々しい力で服の裾をつかまれた。正直言って、可愛すぎてなんかいろいろヤバい。

「わ、わた、っ、わた、しも、・・・す、き」

たどたどしく紡がれた言葉を理解するのに時間は掛からなくて、気がついたときにはまたシュリを抱き締めていた。


伝える気持ち

 

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