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「島に着いたぞーっ!」

のほほんと過ごしていた時に大きな声で聞こえた声は、どこかしら楽しそうだった。まあ久しぶりの上陸って聞いてたし。
とは言え、私だって楽しみだ。だって初上陸!
船内からはバタバタと慌しく走り回る音が響いていた。

「あ、でも私お金持ってないや」

生憎ベリーなんていう通貨のお金は所持していない。服とか生活用品とかいろいろほしかったんだけどなぁ・・。
親父さんに言ったら貸してくれるかな?うーん・・・。
自分の部屋で悩んでいたら、コンコンと控えめにドアが叩かれた。私の部屋に尋ねてくる人なんて滅多に居ないので驚いたが。
ゆっくりとドアを開ければ、目に入ったのはオレンジ色のテンガロンハット。そして半裸の男。

「エースさん!どうしたんですか?」

「チサ!島に着いたから一緒に行こうぜ」

「え、私とですか?」

「あァ!ダメか?」

「とんでもない!すごく嬉しいんですけど・・・、私お金とか持ってなくて」

「それなら心配いらねェよ。親父から貰ったから」

「え!?」

「これで服とか必要なもの買えだってさ」

「・・・こんなにたくさん!?」

渡された札束は日本に居た時でも持ったことがないような札束だった。これだけでいくらあるんだ。
札束を持ちながらおろおろとしていたら、エースさんが苦笑いしながら私の頭に手を乗せてきた。

「親父が良いって言ったから遠慮なんかすんな。家族だろ?」

ニカッと笑うエースさんに、もう何十回目か分からないがドキリと心臓が跳ねた。
顔に熱が集中するのが分かったけどエースさんがすぐに行こうぜと言って私の手を取って歩き出した為、顔が赤いのはバレなかった。


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この世界に来てから、初めてモビー・ディック号から降りた。初めての陸地だ。
久しぶりの揺れない足場に自然と笑ってしまった。そういえばよく船酔いしなかったな、私。
そんなことを考えていたら、気が付けばエースさんはスタスタと町へ向かってしまっていて、慌てて私は後を追いかけた。
エースさんにとっては普通に歩いてるんだろうけど、私は一般人だ。エースさんの歩く早さは私の早歩きと一緒くらい。
それにやっと気づいたのかエースさんは焦ったように謝ってきて、それが何だかおかしくて笑ってしまった。

「とりあえず、必要なもんから買うか」

「はい!」

「そうだなァ・・・服から買うか?」

「いえ、服は最後で良いです。荷物になりますし。まずは小さなものから買います」

まずは歯ブラシとか、タオルとか必要なもの。服なんて安いの選べばたくさん買えるしね。
とりあえず町の中で一番品揃えが良いお店に入り、必要なものを選んではカゴの中に入れていく。こっちでも買い物カゴはあるのか。
エースさんが持つと言ってくれたが、遠慮した。だってエースさんに持たせちゃったらぽいぽいカゴに入れられなくなる。
少しでも時間短縮をしようと思って即決で選んでいった。そして選ぶ事に集中して、エースさんが居ないと気が付くのが遅くなった。

「・・・あれ?」

まさか迷子?でもこれって私が迷子?それともエースさんが迷子?
なんてくだらないことを考えていたが、仮にも相手はあのエースさん。大丈夫だろうと思って、私はまた買い物を再開した。

会計を済ませれば片手には大きな袋。ちょっと買いすぎちゃったかな・・?
キョロキョロとあたりを見渡すがエースさんがいつも被っているオレンジ色のテンガロンハットも見当たらなかった。

「船に帰ったのかな?」

あまりに暇だったから船に帰ったとかレストランに行ったとか。きっとそんな感じだろう・・・たぶん。
仕方なく店を出て、向かった先は洋服屋。わお、可愛い服がたくさん。
店内に入れば笑顔で対応してくれる店員さん。荷物を預かってもらい、服選びに集中した。
どれくらい時間が経ったのか、カゴに洋服が入りきらなくなってしまった。あれ、選びすぎたかな・・・。
これでも1週間をローテーションで着れるくらいの枚数しか選んでないと思ったのに。
とは言ってもここはグランドライン。天候なんてすぐに変わるということで冬物もカゴに入れたせいだろう。
カゴの中にはシンプルで着易そうな服ばかりが入っていた。だって海賊船に乗ってるんだからスカートなんて場違いだろう。

買った服は思った以上に多く、一人でギリギリ持てるくらいの量だった。


「・・ふぅ」

私の体力なんて底が知れてて、かれこれ2回目の休憩である。だって重たいんだもん。

「誰か手伝ってくれー」

「どうした、手伝ってやろうかァ?」

答えてくれるなんてはずのない私のひとり言に返事が返ってきて、思わず顔を上げればそこには下品な笑いをした男達がいた。
そして私の顔を見るなりにやにやと笑った。あ、鳥肌立った。

「なかなかいい面してんじゃねェか」

「ひゅー」

「売る前に一発ヤるか」

3人の男達の手が少しずつ近づいて来て、ホントに逃げなきゃと思ったときにはもう遅くて、簡単に腕を掴まれた。

「・・っ、いや、離してっ!」

「まァそう言うなよ」

必死で腕を振って逃げようとするも、男相手に勝てるはずもなく。周りの通行人たちは知らん顔で歩くだけ。
恐怖で涙が溜まり、落ちそうになるのを堪える。
触れられてる腕が気持ち悪い。少しずつ路地裏の方へと引っ張られて、抵抗するのに全然お構いなしで。

「嫌ッ、離して!」

「うるせェな・・・こりゃ俺たちでまずは躾けねェとな」

「ひっ、も、やッ・・・えーす、さんっ!!!」

助けて助けて助けて!呪文のように何回も心の中で叫んだ。

「火拳!」

その言葉と共に、いつの間にか私は男の手から離されエースさんの腕の中に居た。

「大丈夫か、チサっ!」

「えー、ず、ざんっ」

エースさんが助けに来てくれた安堵感で、ぼろぼろと私の目からは溜まった涙が落ちていた。
3人の男達はエースさんの放った火拳によって既に逃げていた。
私たちも荷物を持ち(エースさんが)船へと足を進めた。先程の握られた腕が気持ち悪くて、近くにあった水道でごしごしと洗った。


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船に帰れば落ち着くまでエースさんが隣に居てくれて、とても嬉しかった。
だけどそれも一時のもので、気が付けば私はエースさんの前で正座してる格好になっていた。

「なんであの場から離れたんだ」

「・・エースさんが飽きて船に帰ったのかなーと・・」

「はァ!?俺が置いて帰るわけねェだろ!」

「う・・・」

眉間にはもの凄いしわが寄ってるエースさん。怖くて顔さえも見れません・・!
でも今回は私も悪かったし・・・エースさんには助けてもらったし。未だガミガミと怒っているエースさんの目を見れば、溜め息を一つして説教が終わった。

「今度からは離れたらその場に居ろよ?」

「はい。・・・あの、ごめんなさい」

「ったく、どれだけ心配したと思ってんだよ」

「・・・、ごめん。ありがと、エースさん」

「・・・あのさ、今言うのもなんだがそのエースさんって止めねェか?あと敬語も」

「え、でも・・・」

「エースでいいよ。その方がしっくりくるし。な?」

「う・・・は、い」

渋々ながら受け入れればいつもの太陽のような笑顔で笑って頭をぐちゃぐちゃになるような撫で方で撫でた。




ガミガミ、お説教



(心配してくれてありがとう)(私、本当に)(エースに出会えて良かった)


 

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