smile | ナノ


あまりの展開に理解が追いつかない。なぜ目の前にはエースが居るのだろうか。
グルグルと私の中で渦巻く疑問。だけどそれに対する答えは出てこないのも明確だ。

「・・・よし、親父のところ行くか!」

にかっと笑う彼に、少しだけドキリと胸が高鳴った。現実でこの笑顔が見れるなんて!
でもその高鳴りも先程の言葉を思い出して、次第に収まってきた。あれ、彼は今親父のところへ行くと言わなかったか。
彼の言う親父は、きっと白ひげの事だろうと思うけど・・・流石に怖い。
もしも気に触るようなことして殺されたらどうしよう!私まだ死にたくないのにっ!
そんな事を考えてる間に、エースはさっさと移動していたらしく船内へ続くであろう入り口の前で「おーい!」と私を呼んでいた。

「す、すみませんっ!」

急いでその場を離れ、エースの元へ走っていく。
私が走ってきたのがそんなに面白かったのか、エースはくつくつと笑っていた。

「俺ァポートガス・D・エースだ」

「あ、シノダ チサです」

「よろしくな、チサ!」

彼の笑顔を見ると“太陽”という言葉が当てはまる。なんでこんな風に笑えるんだろうか。
そして今更だが、空から落ちてきた私を怪しまないのだろうか?
まあ何も聞かれないのは私としては嬉しいんだけど・・・。いつまでも聞かれないなんて事はないだろう。

「あの、」

「なんだ?」

「助けてくれて、ありがとうございます」

「!気にすんなっ」

ああ、なんて眩しいんだろう・・・っ!
さっきから私の心臓はバクバクと鳴っている。
どうしよう、私今まで恋とかしたことなかったけど・・・ヤバイ、これは確実にヤバイ!
ときめきマックスです!誰かが恋はハリケーンだとかバカみたいって思ってたけど、あながち間違いじゃないかも。


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さっきまでは普通に喋れていたのに、今は胸の動悸が止まらない。
別に持病ってわけでもなく、ただ単に怖いのだ。
私の目の前には白ひげさんが居るであろう大きな扉が存在感抜群でそこにある。
キャラ達に会えるのは多少なりとも嬉しい。しかし、だ。空から降ってきた私なんかを怪しまないって方が無理難題だと思う。
つまりは私ってこのまま白ひげさんに会って無事に出られるのかということだ。
まあエース(・・ここではさん付けした方が良いのかな?)が居るから大丈夫だとは思うんだけど・・。

「親父ー!」

遠慮なしにズカズカと入るエースさん。ちょっと待ってください・・!まだ心の準備がっ!
そんな思ってる間にもすでにエースさんは白ひげさんのところへ行ったらしい。

「チサ!入ってこいよ!」

「う、あ、・・・はい・・」

ビクビクとしながら部屋の中に入れば、そこには可愛らしいナースさんたちとありえないくらい大きい人が居ました。

「でかっ」

思わず出てしまった言葉にハッとして口を押さえるも聞こえていたらしく、エースさんはぽかんとし、ナースさんたちはくすりと笑った。
怖くて白ひげさんが見れなかった。が、そんな私の心中を余所にグラララ・・と笑い声が響いた。声も大きい。

「エース、何だこの娘は。お前の女か?」

「違ェよ!さっき空から降ってきたんだ」

「空から・・?グララララ!そいつァおもしれェ。娘、名は?」

「ひぅ、え・・っと、シノダ チサ、です」

「チサ、お前帰る場所はあるのか?」

「・・・ない、デス」

「なら俺の娘になれ!」

船全体に響き渡るような大声で言われた一言が、私にはとてもびっくりして、何より嬉しかった。
チラッと隣のエースさんを見ればまた太陽みたいな笑顔を向けてくれた。

「っ、よろしくお願いします!」

あまりの嬉しさに涙が出そうになるのを堪え頭を下げれば、笑いながら私の頭を撫でてくれる白ひげさんが居た。

「グララララ・・今日は宴だァ!」

船内にも響いていたのか、部屋の外からはうぉおおお!と雄たけびが上がった。
ビクリと肩を揺らしてしまったがそんな事気にもせずにエースさんは話しかけてきた。

「良かったな!チサっ!」

「はいっ」

「そんじゃ行くか」

「どこにですか?」

「決まってんだろ!甲板だよ」

未だに意図が分からず、きっと私の頭の上には?マークが浮かんでいたんだろう。
エースさんが苦笑しながら仲間に挨拶しなきゃだろと言ってくれた。確かに・・・。
納得している私の手を掴んで、足早に甲板へと向かった。ちょ、手繋いでるっ!
私の心臓はまたドキリと音を立てた。あれ、マジで私恋しちゃったんですか。どうしよう。
そんな悩みなんて露知らず、エースさんは甲板のドアを開けた。

見渡す限り、男。
みんな酒を持っていて既に飲み始めていた。行動早いなオイ。
一斉に見られたせいか、こんな大勢の強面の人を見たことなかったからか、恐怖が降りかかった。
すると、強面の人たちの中から見知ったキャラが出てきた。

「エース、そいつが新しい仲間かよい?」

「おう!チサ、挨拶してやれよ」

「うえ!?あ、シノダ チサ・・デス。趣味は料理です。えっと、その・・・よろしくお願いしますっ!」

バッと頭を下げれば、沈黙。あれ、おかしいな、もっとこう・・わあっとなっても・・・あれか、私歓迎されてない的な感じか。
だんだんとネガティブな方向へ考え始め、目からは涙がこぼれそうだった。
唇を噛み締めて、泣きそうになるのを堪えて。
そんな時だった。

『うぉおおおお!!!』

わあっと周りから声が上がった。
驚いて顔を上げると、みんな笑顔で、耳に入ってくる言葉は「新しい家族だ」とか「女だ」とか「歓迎するよ」とか、いろいろだった。
こんな風になるなんて思ってなくて、本当に嬉しくて、私の目からは涙が落ちた。
隣に居たエースさんが驚いて大丈夫か、どうかしたのかって声をかけてくれたけど、服の裾でごしごしと涙を拭ってもう一度前を見た。

「っ、よろじぐお願いじまず!」

涙のせいでそれしか言えなかったけど、隣のエースさんが頭を撫でてくれて。



皆様、はじめまして


(怖い人かと思ったけど)(そんな事全然なくて)(本当に優しい人たちでした)


 

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