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名前が現れてから、ふと周りを見れば俺たちを護るように人が立っている。誰だ、なんて言えるわけがない。だって、この方達は跡部家の人間だった方達だ。昔見た写真に、この方達が載っている。

「おい跡部・・・誰だよこの人?ら」

ぽつりと呟いた宍戸の声にゆっくりと、俺様の先祖様達だ、と答える。俺だって今何が起こっているのか理解出来ていないんだ。誰かが生唾を飲む音が聞こえたと同時に、その化け物は獣のような雄叫びを上げて名前に突進してくる。

「っ名前!」

名前を呼んだって何も変わらないが、呼ばずには居られなかった。そんな俺の心情とは裏腹に、名前は今まで見たこともない冷たい目をして、化け物を見つめていた。




一瞬だった。何が起こったのか理解する前に、その化け物は消えた。

「大丈夫ですか、景吾くん」

「え、あ・・・」

「ふむ、ちょっと混乱してますね。とりあえず帰りましょうか。部員の皆さんも家に呼んでください。お祓いしますよ」

淡々と告げられる事に徐々に頭が回転していくが、いつもよりはかなり動きが鈍い。とりあえずここに居た全員に今日は俺の家に来るようにと伝えれば、全員が肯定を示した。まあ、あんな事があった後に一人で帰るなんて耐えられないだろうしな。

「跡部、そこの足の綺麗な嬢ちゃん誰や?」

「・・・忍足、テメェ」

さっきまで切羽詰った状況だったにもかかわらず、忍足はすでにいつもの態度に戻っている。いや、多少まだ挙動不審だが。

「嬢ちゃん嬢ちゃん、」

「私ですか?」

「せや。名前は?」

「・・・名前、ですけど。えっと、景吾くん・・」

助けを求めるような視線を送ってくる名前に、溜め息を一つ吐いてからすでに到着しているリムジンへ全員乗り込むように伝える。多少狭いが、文句は言わないで貰いたい。家に帰れば、父様と母様が居て、俺の姿を見るなり涙目になり抱き締めてきた。

それからは全員一つの部屋に集められ、お経を唱えられお祓いをされた。今晩はこの部屋から出てはいけないらしい。結局アレがなんだったのかは教えてくれなかった。

「なぁ名前、」

「・・・なんですかぁ?」

部屋の隅っこに一人座っていると、どこからともなく名前が現れ当然のように横に座る。そんな名前に声をかければ、少し眠たそうな声が返ってくる。

「アレは、一体なんだったんだ?」

「・・・、そうですねぇ・・・ヨクナイモノ、ですよ」

「・・・」

「ああいうのが現れるなんて、滅多にないんですけどねぇ・・・」

そう言って、名前は眠気に耐えられなくなったのか、俺の肩に寄りかかるようにして倒れてきた。

「名前?」

「今日は少し、疲れました」

「・・・ありがとう」

「ふへ、」

へにゃりと笑って、名前は目を閉じる。温もりがあるわけがないのに、触れている部分だけがやけに温かく感じた。




守護霊さま!





「見てみぃ、跡部のこの緩みきった寝顔」
「クソクソ、今日あったのが嘘みたいじゃねーか!」
「ちょっとがっくん声大きいCー」
「おい、あんまり騒ぐと跡部起きるんじゃねぇか?」
「宍戸さんの言う通りですよ。でも、確かに滅多に見られない顔ですよね」
「・・・下克上だ」
「ウス」

「・・・・・、テメェら、うるせぇぞ」

『あ、』



end.
2012.03.21


 

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