拍手お礼 | ナノ
最近、たまにだが悪寒が走る事がある。今まではこんな経験なかったのに、唐突にこんな事態になった。別段何かをしたわけでも、心配事があるわけでも風邪を引いたわけでもなく、いたって普通。
「・・・なぜだと思う、名前」
「いきなりなんですか、景吾くん」
急に話しかけられるとは思ってなかったのか、名前はビクッと肩を揺らして俺の方を振り向く。現在、放課後の生徒会室にて俺と名前の二人きりだから名前も普通に話してくれる。ここに誰か一人でも違う奴が居れば俺が小声で話しかけても絶対に返してくれない。昔から、そうだった。
「悪寒が?」
「あぁ・・・」
ことの次第を話せば、右手をあごに当てて考え始める。癖なのか知らないが、恐らく癖なのだろう。俺はそう霊感が強いわけでもないため、よくわからないが霊同士では近くに何かが来たらわかるらしい。気配、とでも言うべきか。
「・・・特に何も感じませんが・・・、少々調べてきますね」
「あぁ、頼んだ」
「すぐ戻ります」
流石に学校でも名前の為にドアを開けたら俺が不審がられるのでやらないため、名前は生徒会室のドアをすり抜けて廊下へと出て行く。守護霊は俺から一定の距離しか離れられないらしく、きっとすぐに戻ってくるだろう。俺はなるべく早く部活に行けるよう書類に目を通す。
数十分くらい経った頃に、名前が戻ってきた。
「何かわかったか?アーン?」
「いえ、特に何も・・・」
「・・・そうか」
「すみません」
「なんで名前が謝るんだ」
「守護霊なのにお役に立てなくて、」
「そんな事気にしなくていい」
そう言うと、ありがとうございますと微笑んだ。名前は守護霊と言うには随分と若いような気がするが、生憎俺には他の奴らの守護霊なんて見えるわけがなく、むしろ名前が見えてること自体が驚きの対象なのだ。笑えばそこら辺にいそうな気がして仕方がない。そんな事を考えながら名前を見ていたら、ぞくり、と背筋に悪寒が走る。
「っ、」
「・・・景吾くん?」
「、なんでもねぇ」
「でも、」
「大丈夫だ。気にするな」
未だ心配そうに見てくる名前に笑えば、少し戸惑いながらも笑い返してきた。
この数時間後に、後悔するなんてことも知らずに。