君はうるさい | ナノ

 

説教が終わった頃には、すでに日が暮れ始めていた。何時くらいなのかと考えながら教室に鞄を取りに戻る。外からは野球部らしき生徒の声が聞こえる。

「・・・どうすっかな」

学校から家(修道院)に連絡がいってるだろうから、はっきり言えばあまり帰りたくない。出そうになる溜め息を飲み込んで、教室のドアを開ける。ガラリと音がして開いたドアから、一歩踏み出そうとして止まる。

「・・・」

明らかに俺の席に誰かが座っている。しかも教室の電気は点いていなくて暗い。俯くように座っているそれは、不気味な雰囲気だったけど、暗闇に目が慣れてくると思わず目を見開いた。

「詩歌・・・?」

「・・・んぅ、」

名前を呟けば、もぞもぞと身じろぎをして、ゆっくりと顔を上げる。寝ていたのか、右手で目を擦り欠伸をかみ殺している。目尻に溜まった涙を拭いて、視線が合った。

「っ、燐くん!」

「お、おう!」

カッと目を見開いてガタガタと大きな音を立てながら席を立ち、近づいてくる。突然の大きな声に驚いたのは秘密だ。

「心配したんだからねバカ!」

「うっ・・・悪かったよ。ってかバカってなんだよ!」

「バカはバカだもん!」

「バカバカ連呼するんじゃねーよ!」

「・・・」

「・・・詩歌?」

先程までの威勢はどこへやら、急に黙り視線は足元へ移動した。突然の事でわけが分からなくなり、おろおろとしていると詩歌の右手が燐のシャツの裾を掴み、小さく呟いた。

「、ホントに、心配したんだから・・・」

「・・・・・ごめん」

ギュッと裾を掴む力が強くなって。

「もう、二度と喧嘩しないでよ」

「・・・努力、する」

「・・・バーカ」

弱々しく出た言葉と、パッと離された手、少し赤くなった目で笑った詩歌を、気が付けば抱き締めていた。



その声は感情を揺さぶるから

(どうしたらいいのか、わからない)


 

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