君はうるさい | ナノ
あの日・・・詩歌と神社で友達になってから、詩歌は良く神社に来るようになった。だけど、それは詩歌も授業をサボってるってことで。どうしようかと上履きに履き替えながら考えていたらヒソヒソと話し声が聞こえる。興味も湧かないし、どうせ嫌味しか言わないだろうから無視して教室へ向かう。
「燐くん!おはよう!」
「・・・はよ、」
「元気ないね?低血圧?」
「別にそんなんじゃねぇけどよ・・・」
「じゃあなんでそんなにテンション低いのさ」
廊下で詩歌と会って話しながら歩いていると、周りから視線を感じる。それが嫌でたまらなくて、もし俺のせいで詩歌が不良とかに絡まれたらどうしようとか、柄にも無い事考えて。ヒソヒソ話はずっと続いてて、もし詩歌まで悪いように言われたらなんて考えて。
「・・・学校じゃ、俺に話しかけない方がいい」
「どうして?」
「詩歌も悪い風に言われそうだし、」
「私気にしないよ?」
「俺が気にするんだよ」
「へへ、燐くんって優しいね」
本当に嬉しそうに笑う詩歌を横目で盗み見ながら歩いていたら、詩歌が職員室に用事があるとかで別の方へ走っていった。俺も教室に行こうと足を踏み出した瞬間、
「ホントあの女バカじゃねぇの?」
「奥村に近づくなんて頭イカれてんだろ」
「偽善者でも気取ってんだろ」
下品な笑い声と共に聞こえてきた言葉に、気がつけばその男子を殴っていた。男子は鼻血を出したのか鼻を押さえていて、隣に居た二人は顔面蒼白で、周りからは悲鳴が上がった。感情に任せて残りの二人にも殴りかかろうと手を振り上げた。
「燐くん!!」
大きくなる悲鳴の中から確かに聞こえたのは詩歌の声で、殴ろうとしていた手はピタリと止まった。そうこうしている内に教師が駆けつけて、俺は生徒指導室へと連れられた。最後に見えた詩歌の顔が泣きそうだった。
こんな喧噪の中でさえ
(君の声は、聞こえるんだ)