賽は投げられた | ナノ

 

「で、なんの用?」

「いやぁ、祓魔師としてはその犬が気になってな」

「・・・祓魔師、」

「おん」

急に黙った少女だったが、すぐにポケットの中をごそごそとあさって、一枚のちょっとボロくなった紙切れを差し出してきた。折りたたまれた紙を開くと、地図が描いてある。

「・・・ん?ここって」

「知ってるの!?」

「知っとるも何も、」

ウチの寺やからなぁ、と呟くと、少女はカッと目を開いた。ちょお、ビックリしたんやけど。

「私、高村 ゆい。出来ればそこに案内して欲しいです」

先程までの態度とは打って変わって、ちゃんとお辞儀もしてくる。警戒心を解く事が無かった少女があっさりと信用してくれたというか、なんや野良猫にでも懐かれた気分だ。

「ほな、行きましょか」

「はい!えっと・・・じゅーぞー?」

「・・・まぁ、柔造やけど」

「よし、じゅーぞー!覚えた。あ、田中さん戻っていいよ」

田中さんは一鳴きしてから、消えた。しかしこんな少女に呼び捨てにされるとは。

「ゆいちゃんは寺に何の用なん?」

「お使い頼まれた」

「ほーか」

ゆいちゃんの為に歩幅を小さくしてゆっくりと歩きがなら小さな彼女を見るが、一体何のお使いなのだろうか。鞄も持っていなければ、ポケットに入ってるような感じでもない。所謂手ぶらと呼ばれる風に見える。
他愛もない会話を交わしながら寺に向かう。驚くな、ゆいちゃんは廉造と同い年らしい。廉造は未だにお使いなんてしたことないのに、ゆいちゃんは知らない場所へまで行かされるのか。

「ここやで」

「ほー、」

「和尚居るかな・・・」

和尚が居そうな場所を目指して、キョロキョロとしながら敷地内を歩いた。



野良猫少女
(よう見開かれる目やなぁ)


 

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