賽は投げられた | ナノ

 

今日は特にする事も無く。だからと言って家に居たら手伝いとか強制的にさせられる破目になるから出てきたのだが・・・

「・・・暇やわ」

行く宛てもなく歩くのも億劫になり帰ろうかと考え始めた時、信号待ちなのかブロックに座っている少女が目に入った。驚くことに、少女は犬の・・・

「(悪魔?それとも使い魔やろか?)」

それと喋っていた。会話するのが当たり前であるというように。と言っても、俺には犬が吠えてるだけにしか聞こえないし、魔障にかかってへん人には少女が独り言を言っているように見えるだろう。

「・・・(声、かけたほうが良いんか?まぁもし悪魔に取り付かれとったら大変やしなぁ)」

どうしようかと立ち止まって考えていたら、信号が青になったのか少女は立ち上がり横断歩道を渡る。その後を不自然にならないように追いかけた。家に帰るのか、はたまた別のどこかへ向かっているのか。少女は当たり前のように犬と会話をしている。

すると少女達は急に走り出し、角を曲がった。

「ッ、」

見失うと思って急いで角を曲がったところで、少女が仁王立ちをして待ち構えていた。傍らには犬がお座りをしている。

「・・・ロリコン?」

「違うわ!」

「じゃあ変質者?」

「ーっ、なんでそうなるんや」

「だって後ついてきてたから」

「・・・気づいとったんか?」

こんな、廉造と同い年くらいの子に後をつけてるのがバレるなんて。少女はキッと睨みながら、俺を見てくる。

「あー・・・俺、志摩 柔造いいます」

「だから?」

「だから・・えっと、その犬が気になって」

「!!」

チラリと視線を動かしながら犬のことを口に出したら、少女はびっくりしたのか目を見開いた。犬に一度視線をやってから、再度俺のほうに視線を向ける。

「田中さんが見えるんだ」

「・・・田中さん?」

「うん。田中さん」

「ワンッ!」

・・・犬に田中さんなんて名前付けるんか・・・。



謎の少女
(それにしても、えらい口が達者やな)


 

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