賽は投げられた | ナノ

 

寮の部屋の一室にはみんなが座れるくらいの長机が置いてあり、どうやら合宿中はこの部屋を主に使うらしい。みんなは荷物を部屋の隅に適当に置いたところで、雪男くんがにっこりと笑った。

「それでは、軽く小テストをしましょうか」

『えっ』

「適当に座ってください。カンニングは無しですよ」

早く早くと急かす雪男くんに従い、みんな鞄の中から筆記用具を取り出し席に着く。私はといえば竜士と出雲ちゃんの間。何とも言えない。雪男くんの手から回されたプリントは計2枚。両面刷りである。

「雪男!これ軽くじゃねーだろ!」

「今日はこれだけですから。静かにして始めてください」

「ぐっ・・・」

口で勝てないとわかったのか燐くんは大人しく問題に取り掛かる。あ、私もやらなきゃ。






「・・・はい、終了。プリントを裏にして回してください」

小テスト・・・というか、普通にテスト並みの量を1時間30分かけて解いた。悪魔薬学だけかと思ったらまさかの今まで習ったの全教科入ってるとか・・・!出雲ちゃんから回ってきたプリントを竜士に渡した後、机の上に突っ伏した。

「私は燃え尽きたよ出雲ちゃん・・・」

「はあ?いきなり何よ」

顔を出雲ちゃんの方へ向けて喋れば、ちょっとだけ戸惑ってるような表情をする出雲ちゃん。そして対面に座っていたしえみちゃんと朔子ちゃんも大変だったねって話してる。私は未だ顔をあげるのが面倒で、だるーっとしていたら出雲ちゃんが立ち上がった。だから反対側の方を見れば、燐くんも立ち上がるところだった。

「ちょ・・・ちょっとボク夜風に当たってくる」

「おう、冷やしてこい・・・」

「明日は6時起床。登校する前の1時間答案の質疑応答をやります」

フラフラとした足取りで出て行こうとする燐くんの背中に追い討ちをかけるように雪男くんがみんなに伝える。明日の朝6時起きか・・・。

「朴、お風呂入りにいこっ」

「うん・・・・・」

「お風呂!私も!」

「ゆいも行くわよ!」

「んー・・・部屋から着替え取ってから行くー」

出雲ちゃんが嬉々として朔子ちゃんをお風呂に誘い私も誘ってくれる。しかし、しえみちゃんを完全スルーとはどういうことなの。3人で部屋を出て行く姿を見つめながら溜め息が出た。そんな私を気にもせず廉造はセクハラ発言をしているのだが、雪男くんの一言で部屋に沈黙が訪れた。

「あと、一応私も居るんだけど。廉造、覗いたら覚悟しといてね」

それだけ告げて私も着替えを取りに部屋から出る。中から雪男くんが諦めの悪い廉造に向かって「無謀な冒険はしない主義なんだ」なんて言ってたのはきっと空耳だと思う。

「・・・はあ、」

どうも合宿は前途多難なようです。




溜め息も吐きたくなる
(胃に穴が開いたらどうしてくれる)


 

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