賽は投げられた | ナノ

 

どういうわけか、出雲ちゃんとしえみちゃんが仲良く(?)なってから数日が過ぎた。うん、しえみちゃん的には仲良くなっているんだろうけど、

「完全にパシられてんだろ・・・」

「え?」

「・・・いや・・・まあ、なんでもない」

ポツリと、みんなが寮に来るまで外で待っていた時に燐くんが言った言葉は、恐らくしえみちゃんに対してなんだろう。確かにここ数日の出雲ちゃんのパシリっぷりは私もどうかと思っていたところだ。

「複雑だよねぇ・・・」

雪男くんと燐くんが二人でこの寮に誰も居ないということを話しているのを聞きながら、溜め息を一つ吐く。

「あ、来たね」

燐くんが小声で新館・・・と呟いてるのをサラリと無視して、雪男くんが視線を向けた方を見れば、確かにみんながこっちに向かって歩いてきている。座り込んでいた私と燐くんはゆっくりと立ち上がる。

「うわ、なんやコレ。幽霊ホテルみたいや!」

「おはようございます」

「ヤダなにココ気味悪ーい!・・・もうちょっとマシなとこないの?あ、コレお願い」

「うん」

唯我独尊な出雲ちゃんはしえみちゃんに手渡したというよりも押し付けた鞄を、しえみちゃんはニコニコと笑いながら受け取っている。それを見た朔子ちゃんがしえみちゃんを諭すように言葉を紡いでいたけれど、どうやら効果がなかったのか、腑に落ちない顔で出雲ちゃんを先頭に寮内へ入っていった。

「いやあ、女の子ってようわからへんわ」

「・・・廉造」

「まあかいらしいからええけど」

隣に立っていた廉造は口元をだらしなく緩めると、寮内へ入っていく。

「・・・もうヤダ」

なんとなく泣きそうになった瞬間、コツンと後頭部を叩かれる。ゆるりと顔を上げれば、目に入るニワトr・・・げふんげふん。竜士の顔。

「はよ行くで」

「あ、うん」

全員が寮へ入った後で、私も続いた。




友を想う
(私としてはしえみちゃんと出雲ちゃんも仲良くしてほしいんだけどなぁ)


 

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