賽は投げられた | ナノ

 

やっぱり燐くんと竜士は似たもの同士だと思う。

「ね、しえみちゃん」

「へ?なにが?」

「二人ってなんか似てるよね」

現在体育の実技授業中。二人で蝦蟇(リーパー)に追いかけられている最中のはずだが、少し離れたここに居ても何か口喧嘩をしながら走っていることぐらいわかる。

「はは・・・坊も結構速いのにやるなあ、あの子」

そう廉造が呟いた直後に、竜士が燐くんの背中に飛び蹴りをし、燐くんは前方へ倒れ竜士は後ろから蝦蟇がついてきていることを考えてなかったのか、すぐ近くまで迫っていたそれに驚く。コラァー!と椿先生の怒号とともに鎖のついた蝦蟇は引きずられていく。悪魔なんだけどちょっとかわいそうだな、なんて思ってみたり。

「バカみたい」

「阿保くさ」

出雲ちゃんと廉造の呟きに朔子ちゃんと子猫丸はただ苦笑いするばかり。それに比べて、燐くんと竜士は椿先生が説教を始めようというのにまだ喧嘩をしている。しかも今度は殴り合いになりそうな雰囲気で。

「ホント、似たもの同士だよね」

「燐と・・・あの人が?」

「うん。あ、因みにあれは勝呂竜士って名前ね」

独り言のつもりで呟いたのがしえみちゃんに聞かれたらしく、オドオドとしながら返事をしてくれる。廉造と子猫丸は下に降りて竜士を取り押さえ、燐くんは椿先生に取り押さえられている。二人が突っ掛からなくなったのを確認してから、椿先生は竜士だけを少し離れたところへ連れて行った。下では燐くんと廉造、子猫丸が何かを話していたが聞こえなかった。

「授業再開するゾー!」

数十秒経った時に椿先生と竜士の話は終わったのかこちらへ戻ってくる。次は私の番かな?朔子ちゃんと一緒かな?なんて少しだけわくわくしていたのに、椿先生の携帯が鳴り子猫ちゃんとやらから電話があり体育の授業は自習となった。

「体育で自習ってなんやねん」

「今だけは廉造に賛成だよ」

「今だけって・・・ゆいちゃん酷いわー」

「ちゃん付けとかきもい」

ズーン、と重い空気をまとった廉造が誕生した。そうこうしている内に、どうやらまた燐くんと竜士は口喧嘩を始めたらしく、竜士が自棄になって蝦蟇に触りに行くために行ってしまった。

「俺は!サタンを倒す」

「・・・竜士、」

「ブッ、プハハハハ!ちょ・・・サタンを倒すとか!あはは!子供じゃあるまいし」

出雲ちゃんの笑い声に、直感でヤバイと感じた。同時に、蝦蟇が竜士に向かって飛び掛る。

「っ、竜士!」

私が走り寄るよりも、銃を出すよりも早く、隣を何かが通り過ぎる。いや、何か、じゃない。臭いでわかる。

「、燐・・・くん?」

「きゃああ!」

「燐!」

ハッと蝦蟇の方を見たら燐くんが竜士を庇って噛み付かれている。反射的に銃を取り出して構えた瞬間に、蝦蟇はゆっくりと燐くんから離れた。

「いいか?よーく聞け!サタンを倒すのはこの俺だ!てめーはすっこんでろ!」

シンと静まり返った演習場に、燐くんの声が響いた。ていうか、やっぱり二人って似てるわ。安心したのか、私は腰が抜けてその場に座り込んだ。




似たもの同士
(・・・犬猿の仲?・・・同属嫌悪?とりあえず心臓がヤバイ)

 

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