賽は投げられた | ナノ

 

「ゆい、行くわよ」

「ほへ?」

唐突に私の座っていた席の前に立っていた出雲ちゃんは、さも当然のように言った。さて、どこへ?思わず間抜けな声が出てしまったのは仕方がないと思う。

「次の授業、体育だから着替えに行こう?」

「・・・ああ!」

「ったく、察しなさいよね!行こう、朴」

ぷりぷりと怒った出雲ちゃんに手を引かれて朔子ちゃんは若干苦笑いを浮かべている。私も持ってきたジャージの入った鞄を掴み、出雲ちゃん達の後を追うように教室を出ようとした。

「あ、しえみちゃんも・・・」

一緒に行こう、という言葉は消えてなくなった。だってすでにしえみちゃんの姿はなかったから。恐らく燐くんと一緒にどこかへ行ったのだと思う。どうせならしえみちゃんともっと仲良くなりたかったな、なんて思っていたら出雲ちゃんから名前を呼ばれる。

「早く来なさいよ!」

「わあ、ごめん!」

「罰として荷物持って」

「えぇ!?仕方ないなぁ」

「ちょっと、なんでそんなにやにやしてるのよ。気持ち悪い」

「うぐっ・・・!」

心に100のダメージ!なんつって。出雲ちゃんは、やっぱり自分で持つわよ、と言って私の手から自分の鞄を掻っ攫っていく。クスクスと笑い声が聞こえて、朔子ちゃんの方を見れば可笑しそうに笑っている。

「ちょっと朴、なに笑ってるのよ」

「うん、ごめんね。出雲ちゃんとゆいちゃんが楽しそうだったから」

その言葉に出雲ちゃんは少しの間停止したかと思えば、例の如く見事なツンデレっぷりを見せてくれた。それから早足に歩く出雲ちゃんを朔子ちゃんと二人で追いかけながら更衣室に行った。

「案外普通だね」

「安心したわ」

「そうだね」

私、出雲ちゃん、朔子ちゃんの順で祓魔塾の更衣室の感想だ。廊下や教室の古さからもっとボロいと思ってたが、意外にも掃除はちゃんとされているみたいだ。三人で並んでロッカーを使いながら着替える。といっても制服からジャージに着替えるなんて数分あれば終わるわけで、授業が始まるまでまだ少し時間があった。

「あれ、出雲ちゃん髪の毛結びなおすの?」

「え?あぁ、そうだけど」

「ふーん・・・ねね、私にやらせてよ!」

「はあ?ゆいに?」

「大丈夫だから!ね、お願い!」

「・・・まあ、別にいいけど」

「やった!」

ササッと出雲ちゃんの背後に移動したら、出雲ちゃんはゴムひもを外し、私に渡してくれる。どんな髪型にしようかなーなんて考えながらサラサラの出雲ちゃんの髪に手を通した。




女の子同士
(どうかな、出雲ちゃん?)(・・・ふん、まあまあじゃない)(出雲ちゃんは素直じゃないねぇ)

 

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