賽は投げられた | ナノ

 

普段の燐くんはどうなのか知らないけど、とりあえずよく寝るのは理解した。そしてそれに対して竜士がイラついていることも。しかしそんな事を周りの人は気にした様子もなく、普通に授業を受けていた。雪男くんの悪魔薬学までは。

「この間の小テストを返します。志摩くん」

「ほぉい」

「私、自信あるよ!得意分野だもん!」

ダルそうに答案を取りに行く志摩くんと、嬉々として燐くんに喋りかけているしえみちゃん。家が祓魔屋であの庭の世話を一人でしていたんだから植物に関してはきっとここに居る誰よりも理解してるんじゃないかな。雪男くんもすごいけどね。ジッとしえみちゃんを見ていたら、突然こちらを向いてきた。

「?」

しえみちゃんは私と目が合うと頭にはてなマークを飛ばした。うん、なんとも分かりやすい。とりあえず、なんでもないよ、との意味を込めて笑顔を向ければしえみちゃんは顔を真っ赤にさせたタイミングで雪男くんがしえみちゃんの名前を呼んだ。その後燐くん、竜士が呼ばれて、最後に私が呼ばれるのを予測して(といってもみんなの名前はすでに呼ばれたからなんだけど)雪男くんの方へと行けば、燐くんと竜士が喧嘩を始めた。

「ばばば、ばかな・・・お前みてーな見た目の奴が98点も取れるわけねーだろ。常識的に」

「なんやと!?俺はな祓魔師の資格得る為に本気で塾に勉強しに来たんや!」

「はい、ゆいさん。なかなか良い出来ですよ」

「あ、ありがとう。・・・止めなくて良いの?」

「・・・そうですね、止めましょうか」

何事もないように雪男くんは私に小テストの答案を返してくれた。因みに現在進行形で燐くんと竜士は騒ぎ、出雲ちゃんはもの凄く迷惑そうに顔を歪めている。後ろのパペットくんとフードくんは我関せず、だ。ヒートアップしていく二人を止める為に、廉造と子猫丸、雪男くんが二人を押さえている。

「あー、そのくらいにしたら?二人とも」

「ゆいには関係ないだろ!」

「あーはいはい。どうせ関係ありませんよーだ」

「兄さん、人に当たるのは良くないよ」

「うるせぇ!」

何というか、ガキかっての。若干イライラとし始めた私を、雪男くんは見逃さなかった。燐くんと竜士がまた煩くなってきたところで、授業終了の鐘が鳴る。

「今日の授業はここまで」

そう言うと雪男くんはさっさと授業の片づけをして教室から出て行く。竜士は舌打ちをしてから、廉造と子猫丸と一緒に教室を出て行った。なんていうか、この授業だけでめっちゃ疲れた気がする。出てきそうになった溜め息が、しえみちゃんの表情を見て飲み込まれた。

「・・・しえみちゃん?」

「・・、え、あ、へ!?」

「大丈夫?」

「?うん、大丈夫だよ!」

「ならいいんだけど・・・」

少しだけ、暗い表情をしていたような気がした。




小テストと衝突
(とりあえず二人の仲はどうにかならないのかな)

 

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