賽は投げられた | ナノ
私の役目は、燐くんを見張り何かあったら対処しなければいけないらしい。昨日、メフィストからそう伝えられた。まあ燐くんが大人しくしていれば私には何も害が無いわけなのだが、どうやら燐くんはジッと部屋にこもっているのは嫌いな性質らしい。
「全く、こっちの身のもなれっつの」
「それは我のセリフだ」
「だって仕方ないじゃん。近くに居たら見つかりそうだし」
「だからと言って我を道具の様に呼び出すな馬鹿者」
「はいはい、ごめんってば。あ、祓魔屋に行くんだ」
ヒューイに乗って上空から奥村兄弟を見張る。因みに犬神は空も走れるが狛犬は走れない。しかもかなり上空に居るため普通の人間には気をつけないと見えないだろう。母から貰った勾玉はしているものの、ヒューイとの意思疎通が出来ていれば視力だけ向上させる事も出来るのだとか。こんな便利なものがあったならもっと早く見つけてほしかった。
「・・・ゆい、どうやら祓魔屋の娘と接触しているみたいだぞ」
「えっ、雪男くんは何してるのさ!」
「買い物じゃろう」
「真面目に答えなくていいから」
目を凝らせば確かに雪男くんの姿はなく、燐くんはピンクの着物を着た女の子と喋っている。会話の内容は聞こえないが、まあ恐らく大丈夫なんだろう。女の子も笑ってるし。
「あーあ、今日はゆっくりするつもりだったのに」
「それを言うなら我もじゃ」
「ヒューイはいっつも休んでるじゃん」
「む・・・」
「む、じゃないっつの。・・・燐くんに何か異変があったら教えて」
「何をするつもりじゃ」
「ちょっと寝る」
「・・・振り落とすぞ」
「そうしたらヒューイも死んじゃうね」
ニタリと自分でも分かるくらい嫌味な顔をして笑えば、ヒューイは押し黙る。そう、私が死んだらヒューイも死ぬし、ヒューイが死んだら私も死ぬ。そういう風にできているらしい。だから私たちはお互いの事を必死で護るし、力も貸す。そういう関係性。
「ねぇ、ヒューイ」
「なんじゃ」
「・・・なんでもない」
ふわふわの毛に顔を埋めれば小さな声でくすぐったい、とヒューイが呟く。ギュッと抱きつく力を強めた時、急激に悪魔の臭いがした。今までよりは平気だが、やっぱり突然力を解放するのは出来る限り止めてほしいな、燐くん。
見張り中
(あ、雪男くんも居るじゃん。なら安心かな)