賽は投げられた | ナノ
「それでは、気をつけて帰ってくださいね」
雪男くんの一言で塾の講義が終わり、それぞれが鞄を持って帰路につく。私も帰ろうと鞄を手に取り立ち上がろうとしたら、ふと影が出来た。
「?」
「アンタもどうせ同じ寮なんでしょ?帰るわよ」
「・・・出雲ちゃん!」
フン、と顔を背けた出雲ちゃんの頬はほんのりと赤くなっている。隣に居る朔子ちゃんもほんわりと笑いながら立っている。いやぁ、初日から塾で友達が出来て帰りも誘ってくれるなんて・・・!しかし、だ。
「あー、ごめんね。すっごく嬉しいんだけど、私みんなとは違う寮なの」
「・・・は?」
「寮って一つじゃないの?」
「うーん、そうなんだけどね。ちょっと訳ありなんだ」
「へぇー、わかった。気をつけてね」
「うん。朔子ちゃんも気をつけてね。出雲ちゃん、ごめんね?」
「フン、別に気にしてないわよ!帰ろう、朴」
バイバイと手を振れば朔子ちゃんは手を振り返してくれたが、出雲ちゃんは耳まで真っ赤になってしまった。そんな会話をしていたせいか気がつけば教室には雪男くんしか残っていない。わお、ビックリ!
「ゆいさん」
「あ、なに?」
「もしかしてゆいさんも旧男子寮に?」
「うん、そうだよ。何かあった時に対応できるようにーってメフィストがね」
「・・・そうですか。じゃあ、部屋はどこに?」
「雪男くんたちの部屋の隣」
「えっ!?」
「の隣の隣」
「・・・」
へらっと笑えば、雪男くんからは苦笑いが返ってくる。まあ流石に隣は近すぎるだろうって事で、私の部屋は一応角部屋になった。まあ同じ階にいるから何かあったらすぐに対処できるだろうし。
「・・・それじゃあ、帰りましょうか」
「そだねー」
眼鏡をクイッと上げてからさっきとは違う笑みを浮かべた雪男くんの後を追った。
旧男子寮へ
(うっわぁ・・・幽霊とか出そう)(怖いんですか?)(いや、平気だけど)(・・・)