賽は投げられた | ナノ
キッと睨みつけてくる彼と、若干鼻の下を伸ばしている彼と、苦笑いをした彼。
「えっと・・・お元気そうで何よりです」
「アホか!」
スパーンと綺麗にツッコミが入る。くそう、私だってビックリしてるんだからな!と言うか、
「子猫丸はいいとして、あんたらの髪の毛どうしたし」
「あ、似合いますやろ?」
「フン、気合を入れただけだ」
「・・・廉造と竜士って事でいいんだよね?」
「他に誰がおんねん」
うん、とりあえず髪の事は気にしないようにしよう。気にしたら負けだと思う。いや、本当はまだちょっと気になってるんだけど。大体気合を入れるのがなんで鶏冠?まじまじと竜士の髪を見ていたら、急に両肩を掴まれる。
「ちょ、痛い!」
「あ、すまん」
「いや、別にいいけど」
「ところで、なんでゆいがここにおんねん」
「私も驚きだよ。驚き以外の何ものでもないよ」
「話逸らすなや」
ガクガクと掴まれた肩を揺すられて脳みそまで揺れる。竜士から視線を外して他の方を見れば、女の子二人組みと目が合った。笑いかけたら、ショートヘアの子は笑い返してくれたけどツインテールの子はそっぽを向いてしまった。軽くショック。
「聞いとんのか?」
「いや、うん。聞いてます。だから離して下さいお願いします」
渋々といった様子で肩から手が離され、揺れていた脳も元に戻る。
「坊はゆいさんの事が心配なだけどすよ」
「ちがっ、俺はただ単に・・・!」
「坊も素直やありませんねぇ」
「黙りや!」
見る見るうちに顔が赤くなっていく竜士に、廉造と子猫丸は笑っている。うん、前に会った時と大して変わらないような気がする。聞こえないくらいに小さく息を吐き出した。
「あのね、」
「!お、おう」
「私の家ではみんな竜騎士の称号を取らないといけないわけ。だから、私もここに居る。OK?」
まだ少しだけパッとしないような顔をした竜士だったが、それ以上は何も聞いてこなかった。
ここにいる理由
(まあぶっちゃけると燐の監視のためでもあるけど)