賽は投げられた | ナノ

 

塾内はなんというか、古臭い。人っ子一人居ない廊下をだらだらと歩く。どうせ授業には遅れてるわけで、今更急いでも変わらないかという安易な考えから、現在の状況に至るわけです。

「メフィストも居やがるな・・・」

教室の入口前につけば、中からはメフィストの臭いが漂ってくる。メフィストにはある程度耐性はついたが、何分鼻が利くもので。重たい溜め息を一つ吐いてからドアを開けようと手を伸ばした。

「なんで俺に言わねーんだ!」

少しだけドアを開けた瞬間、中から燐くんの大声が聞こえ、次の瞬間にはガチャンと何かが割れる音が部屋中に響いた。

「ぶわ、くっさ!?」

「ーーッ!!?」

鼻がひん曲がるほどの強烈な異臭。言っておくが、私は犬神憑きのせいで普通の人よりも数十倍、鼻が良い。思わず勢いよく教室のドアを閉めた。閉めたが、未だに中から異臭が漂ってくる。

「もうやだ、帰りたい」

ぼそりと呟いた数秒後に教室内から銃声が鳴った。肺一杯に空気を吸い込んで、気合を入れる。

「雪男くん!」

「ゆいさん!」

「お前っ!」

奥村ツインズが驚いた表情でこちらを見る。教室内に居た他の生徒は丁度入口の方へ非難している最中だった。

「皆さんを頼みます」

「りょーかい」

右手の印からハンドガンを呼び出して、こちらへ向かってくる小鬼(ホブゴブリン)を撃ち抜く。ぶっちゃけ雪男くん一人でも何とかなるような気がするが、まあ念には念をということで。女の子二人組みが廊下へ出て、男子三人組が近づいてきた。

「・・・ゆい?」

名前を呼ばれて視線を小鬼から視線をずらせば、目を見開いているニワトリみたいに真ん中の髪の毛だけ金髪のと、ドピンクで頬を薄っすら染めているやつと、

「子猫丸!」

京都で仲良くなった子猫丸が居た。ということは、もしかしなくても二人はあの二人なのだろうか。

「おい、早く行けよ」

ドアの前で立ち止まっていた三人に、後ろからパペットを持った子がしゃべりかけた。おおう、凄いなパペット。渋々といった表情で出て行った二人と、苦笑しながら出て行った子猫さん。全員が廊下に出たところで、雪男くんに促され私も廊下へ出る。

「すみません、僕のミスです。申し訳ありませんが、少し外で待機していてください。ゆいさん、頼みます」

「うん、任せて」

「お願いします。奥村くんも早く・・・」

雪男くんが燐くんを廊下へ促したが、それは燐くんがドアを蹴って閉めてしまったことで終止符が打たれた。

「おい、ゆいなんやろ・・・?」

くるりと後ろを振り向けばものすごい眉間にしわを寄せた彼と目が合いました。



ニワトリとドピンクとネコ
(子猫丸以外変わりすぎてなんて言ったら良いんだろうか)


 

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