賽は投げられた | ナノ
メフィストの居なくなった車内は凄く静かだ。だって運転手さんと喋るわけでもないし。手の平に描かれている魔方印に“携帯”と念を送ればポンッと現れる。便利と言えば便利なのだが、手の平に魔法印なんて普通の人から見れば奇妙極まりないに違いない。ふぅ、と息を一つ吐いてから近くにあった湯のみに熱いお茶を注ぐ。
携帯を弄りながらお茶を飲む私は図々しいだろうか?否、ここに一人私を置いていったメフィストが悪い。運転手さんも心なしか運転が荒いような気がするのですが。ポチポチと携帯を弄っていたら、グンッと車が急に加速しだした。
「ぐふっ」
丁度お茶を飲もうと湯のみを傾けた瞬間だったせいで歯に湯のみが当たる。幸いな事にお茶が顔にかかると言う事は無かったが、出来る事ならもう少し安全運転でお願いした
「うをぉっ!」
今度は勢い良くギキィイイ!と音を立てて車が停車し、私は座っていた座席から飛ばされるような形で床に落ちた。湯のみも手から滑り落ち、車を濡らした。
「・・・やっべ」
例えメフィストの車だとしても、汚すのは良くない。しかしこれは不可抗力という・・・。
悶々とどうするかと床に突っ伏したまま考えていると、ドアが開いた。
「・・・ゆいさん、何をしているんです?」
メ フ ィ ス ト に
見 ら れ た !
「最悪だ鬱だそうだ殺そう」
「えぇ!?何でそうなるんですか!」
「冗談」
「冗談を言っている顔に見えないのですが・・・」
ぶつぶつと未だ文句を言っているメフィストを尻目に立ち上がりスカートの埃を払う。ぶっちゃけ埃がついたかも謎ですが。お茶の件はいつか謝ろう。私が先程の座席に座りなおせば、メフィストが隣に座った。
「なんで隣に座るわけ?他にも空いてるじゃん」
「他にも乗る人が居ますからね」
そう言って、青い目をした少年がムスッとした表情で乗り込んできた。私と目が合うと、目を見開いて驚いていた。目を逸らすことも出来ずにジッと見ながら彼の動く方へと視線を向けていた。
「・・・ゆいさん?」
「え、あ!雪男くん!?」
彼から視線を外せば、雪男くんが驚いた表情をして私を見ていた。ぶっちゃけ私もビックリだよ。あれ、ということは・・・。
ターゲット発見
(彼が、魔神の落胤・・・?)