賽は投げられた | ナノ
急いで家に帰れば、父と母と、なぜかメフィストが居た。少しだけ顔が歪んだのが自分でわかる。
「お久しぶりですな」
「・・・そうですね」
「ところで、今日私がここへ来た理由、ゆいさんにはわかりますかな?」
「・・・」
家路の途中で、ずっと考えた。なぜ獅郎さんが亡くなったのか、あの時の強い悪魔の臭いはなんだったのか。そして辿りついた答え。
「・・・、獅郎さんは、悪魔・・・魔神(サタン)に、やられたんですね?」
「ほぉ、良くわかりましたな」
感心するような目で見るメフィストが、気に食わない。だって、彼は私が分かっていると、確信していたから。
「高村家の方々に隠しておけることではありませんからね」
そう言って、メフィストは語りだした。魔神の子が、この地上に居る事を、それが、獅郎さんを殺した事を、それの名前は、奥村燐だと。
「奥村・・・」
「そう。彼は奥村雪男くんの兄ですよ」
何度か一緒に悪魔払いの手伝いをしたことがあって、私と同い年の雪男くん。その兄が、魔神の子。ニヤリとメフィストは笑い、言い忘れてましたとありえない嘘をついてまた話す。
「ゆいさんには、奥村燐の監視をお願いしたいのです」
ウィンクを飛ばしながら語るメフィストに、苛立った。
気に食わない奴
(わかりました、と呟いた私の声は小さかった)