賽は投げられた | ナノ
私の犬神は、他の犬神よりも格が上らしい。そう聞いたのは昔の事で、当時の私には理解できなかった。だけど、
「・・・まさか、ねぇ・・」
久しぶりに駄菓子屋にお菓子を買いに行こうと山奥の家から町まで歩いていたら、とても強い悪魔の臭いがした。あまりの臭いに鼻を摘むがあまり効果がなく、仕舞いには立っている事すらままならない。少し遠くから知らないおばちゃんが駆け寄って心配してくれるが、それどころではない。
一体どれ程その場にしゃがんでいたのか、臭いも収まって顔を上げれば、ぐるりと人だかりに囲まれていた。
「あ、大丈夫かい!?」
「え、あ、はい」
なんと警察の人まで呼んだらしく、酷く慌てていた。とても申し訳なくて謝ろうとしたら、携帯が鳴った。ドクンと心臓が一跳ねした。携帯のディスプレイを見れば“父”と表示されていた。滅多な事がない限り電話なんてしない父からの電話で、先程よりも鼓動が速くなる。震える手を押さえて電話に出る。
「も、しもし」
「――ゆい、落ち着いて聞くんだぞ」
心臓が破裂してしまうんじゃないかと思うほどに、鼓動が速い。それ以上父の言葉を聞きたくない。でも、聞かなければいけないんだ。黙って父の言葉を待っていれば、ゆっくりと父の言葉が告げた。
「――――――」
あぁ、やっぱり。先程まで激しく脈打っていた心臓が、今は打って変わったように静かになっていく。どうしてだろう、涙すら出てこないよ。
突然の
(獅郎さんが、亡くなっただなんて、理解出来ない)